帰りにセブンに寄るぐらいしかないんだけど
寿ハチミツ
第4話
半地下の彼氏
 昔、同棲中の彼氏宛に赤い封筒が届いた。
 彼氏は常にお金がなく、労働意欲もなく、空前絶後の失敗でお金を失う、貧乏神に愛された男。会社のお金を預かった際に間違って(?)自分の借金返済に充ててしまい、わたしが肩代わりしてお金を返した過去がある。

 封筒は赤紙と同じ色なのでかなりビビった。そして薄っすら「金を払え」って内容なんだろうなと想像がつき、虚無を感じた。追い打ちをかけるように玄関ドアに手書きのメモも貼ってあり、おそるおそる確認すると「〇〇(彼氏の名前)さんへ。急に来なくなって心配しています。××社一同。」と書かれていた。

 彼氏が無職になり、奇妙な事件が起きた。わたしが田舎に帰っている間に、棚に仕舞っておいた生活費の入った小さい財布が消えている。彼氏に聞くと「掃除してたら引き出しの中身ひっくり返しちゃって、そのとき俺のカバンに財布が紛れこんじゃったみたい。そのあと実家に行ったから、認知症のおばあちゃんが失くしちゃったんじゃないかな。」と言っていた。

 彼氏は以前、わたしの貯金箱と家賃を入れる袋からそれぞれお金を盗んだ前科があって、家にお金を置く制度は撤廃していたというのに。うっかり戦場で気を抜いてしまった。

 その翌週に至っては、普通にわたしの財布から1万円が抜き取られていた。もはや、わたしは泥棒と住んでいた。「信用できないんだけど、何考えてるの?」と聞くと彼氏は一言も喋らなくなり、そのまま寝た。家に届いた赤紙は2通に増えていた。

 そうこうしている内に、なぜか彼氏の持ち物にカビが生えまくる怪奇現象が起きた。金銭トラブルの台風の目である彼氏は感覚が狂って、カビ程度の異常では取り乱さなくなっていた。確かに半地下マンションだったから、陽当たりは良くなかったけど…。管理会社に電話しても「これまでの住人にそのような事はなかった」と言う。
 カビが生えた戦場に住む理由はない。彼氏と別れ、わたしは陽の当たる家へひとりで引っ越した。
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