帰りにセブンに寄るぐらいしかないんだけど
寿ハチミツ
第2話
サークラ女先輩
 男女の友情には正解がないから難しい。特に若い頃のグループ交際は多くの若者が傷つき傷つけられ、大人へと成長していくと思う。

 わたしは19歳のとき上京資金を貯めるため、田舎にしては時給が良い居酒屋でバイトをしていた。久しぶりに会った中学時代の先輩が仕事を探していると聞き、バイト先を紹介する事になった。
 この先輩、美人で面白いんだけどパチスロ好きで股がゆるい。そしてペットのタランチュラの餌用ゴキブリを数百匹飼っていて、その大量の虫たちと一緒に裸の男とのツーショット写真をSNSにアップしたりする、マトモな女子は到底ついていけない人だった。

 ある日先輩から「バイトの木村君、ハチちゃん(わたし)のこと好きなんだって!」と言われた。木村君はよく遊ぶバイトメンバーのひとりで、先輩は恋愛相談を受けたという話だった。
 わたしは嬉しかったし、かなり浮かれた。しかし目標の貯金額は達成間近。わたしは遠距離恋愛なんてできる自信がない。「ハチちゃんはどう思っているの」と聞かれたけど、先輩には何とも歯切れの悪い返事をした。

 それからしばらく先輩はわたしと木村君の仲を取り持つべく、村枝君というバイトの男子を誘い、四人で遊びに行くことが増えた。そしていつの間にか、わたしは当初の目的に反してみんなと離れがたくなってしまっていた。

 ところが、ある時から男子二人がわたしに対してよそよそしい態度を取るようになった。不思議に思って先輩に「何か知りませんか」と聞くと、『気付いちゃったか〜』という顔で先輩は言った。
 「私、村枝君のアパートに一人で遊びに行ったときに一緒に寝たんだよね。その後ちょっと気まずいって木村君に話したら、バイト帰りに俺のも舐めてくださいよって言われて…」

 (舐めてください?)わたしは反芻した。
 「えっ、バイトの後どこで舐めるんです?」気が動転したわたしは、先輩も木村君も実家だった事が異様に気になってしまった。
 「親の車の中とか」(親の車!?)「木村君の家で家族寝た後、お風呂に忍び込んだりとか」ちなみに木村君は七人家族だ。
 「でも、ハチちゃんのことあったから最後までしてないし、安心してね!」家に着く頃には「みんなと離れがたい」という気持ちが吹き飛んでいた。

 翌日、わたしは謎の高熱を出し、初めてバイトを休んだ。そしてそのままバイトを辞めてしまい、翌週には部屋を決め、何かに憑りつかれたように段ボールひとつ抱えて上京した。
 十代の頃は正しさに囚われていたので先輩とは絶縁してしまった。でも先輩のおかげで迷わず上京できた訳だし、わたしも今は「やっぱり面白い人だったな〜」と思えるくらいには、大人になっている。
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