画人文人 よんじょう
南仏コートダジュール在住の日本人。藍の万年筆で描かれる独自の絵は不思議な魅力を放つ。個展で展示される100点ほどの絵はほぼ完売。アメブロのヨーロッパ部門で有名なブロガーでもある。
<南仏ネコ絵巻>ではフランスのネコにまつわるグッズやよもやま話をイラストとともに紹介します。
「フランス絵巻」

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“新年は立春から”という説がございます。今年は酉年。

フランスに干支はないけど、雄鶏(コック)は、フランス国家のシンボルです。

鶏は、仏国では、“ココリコ”と鳴くことになっている。
鶏の声帯のせいではなく、仏人の耳と脳がココリコと受信する。

『鶏はホーホケキョと鳴く』という国に生まれて育てば、疑いもなく、“ホーホケキョ脳”になるのです。

“国の影響なんて受けてないわ”と豪語する人でも、生まれた国のコケコッコーは疑わないものよ。

では、猫の鳴き声は、仏人の耳にはどう聞こえているか?

『ミャーウ』『ミャウ』(miaou)です。
『ニャー』より『ミャーウ』と聞こえる仏人の蝸牛のほうが、精巧にできている気もします。さらに日本人のように、人間が猫言葉を使ったりはしないんニャ。

2

言葉にも遊び心を取り入れるのは、日本人の得意技。

人間が、語尾に“ニャー”を平気で採用するのは、人間と自然界(動物)に境界がないエスプリ、なのかもしれません、ニャ。
長い鎖国で、異人(人間界)との境界は埋まらなくとも、自然界とは抵抗なく一体化する。

お山に登って、頂上に“制覇”の旗を掲げる西洋人と、頂上で“山の神様”に手を合わせる日本人の違い、といえば分りやすいかニャ?

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鳴き声といえば、“声”の表現に猫が出てくる仏語に、こんなんがあります。
un chat dans la gorge(直訳:喉の中にネコがいる)

意味は、“声がシャガレている”

日本では、“ねこなで声”のように、媚びを含んだ声帯の時に猫が登場しますけど、仏人の声帯は武骨ですな。猫はどうやって喉に入ったんやろな。

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一方。
人間の声には、顔以上に、その人が出ます。

『女は(を)信用していない』と言った日本人作家が、信用していたのが『声』だった。

女は、対面する人と場面によって、声が変わる。
男だって、“よそいきの声”を使うけど、あらゆるシーンで、声の使い分けをやってのけるのは圧倒的に女。

女の真の声(本性)は、倦怠期も枯れ果てた夫に対して発している声、だと思うヨ。
旦那さんに限らず、油断している相手には、その人本来の声が出ています。

私の知人に、普段はサバサバしていて、女の色気なんかは30年前に置いてきたような方がおりましたが、この人の電話&留守電の声をきいた時も愕然としましたよ。

ネチョ~っ、とした甘~い声だったのだ。
日常とのあまりのギャップに、ギョっとするも、“つっこんではいけない領域”ゆえ、何も聞かなかったことにして、我が耳に折り合いをつけました。

しばらく経ってわかったことは、その人の本質は声のほうにあった、という事。

普段のサバサバは、そうみせたい自分の姿、内面は、粘着質の“THE女”なのだった。

表の顔と裏の顔のギャップ分は、声のギャップに出ているのです。
内と外で、声が一致している女なら、クダンの作家も信用するんじゃないかな。

5

先日、日本の映画(アニメ)をみました。

同じ日に、仏語版と日本語版の二本(同じ映画を二回)みたんですわ。
最初に仏語版、その2時間後に、日本語版。

日本語版が始まってスグに『え?』となったのも、登場人物の『声』だった。

意外なことに、仏語版のほうが遥かに自然体だったのです。

というか、違和感は、“比較するものがあって顕著になるもの”。
仏語版をフツーにみおわった後、日本語版をみた途端、違和感が走ったのだ。

女性陣の声が皆、高く、可愛すぎた。(お婆さん役を除く)

仏語版が日常の耳慣れたトーンだっただけに、日本語になった途端、作られた発声(セリフを読んでいる感じ)に聞こえたんですわ。

日本のTVは、この“甘えた可愛い声”が当たり前になってるんで、誰も何とも感じないんでしょうね。
では、なぜ、日本人女性は、甘ったるい声を出すのか?

甘く可愛い声が、男性に好まれるという土壌だから、ですね。
女側の固定概念もあるけど、オスへの媚びが、長年習慣化したものとみます。

メスがオスに媚びるのは、種族繁栄のために正解です。
ただし、これからの人間界は、オスがメスに媚びる時代に移行する可能性大だけどね。

では、フランス人女性の場合は、どうか?

おおむね、声は低い。
というか、各人が自分本来の声を、そのまんま発声している。

私の知る限り、唯一の例外が、“お天気オバさん”(TV天気予報歴28年。先日退職された70歳前後のスレンダーマダム)。
この人だけは、日本でいう“ぶりっ子”の発声だった。

彼女は総合的にメルヘンチックな人なんで、その声が似合ってましたが、本来、仏国では、可愛い声がモテる武器にはならないんで、声を作る必要も生じないのです。

声も環境(国)に影響されている、ってことですな。

では、私はどうか?

いかなる国においても、ネコと犬に対面している時だけ甘い声にニャ~ル。

猫の前では“猫撫で声”、ってことでまとめておきミャ~ウ。

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