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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❺

こだわり過ぎる会社 インディーズゼロ 編

第4回:現実と似ているパラレルなゲームの歴史

※取材・文:とみさわ昭仁
※撮影:鈴木昭寿
※編集:山本直人(株式会社アンビット)
取材協力:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
     有限会社インディーズゼロ
CEDEC2012で使用した資料で説明を行う鈴井氏 CEDEC2012で使用した資料で説明を行う鈴井氏

■ゲームソフトを買ったときの喜びを追体験する

鈴井 これはCEDECで講演したときのパワポ資料なんですけど、ノスタルジックなゲームのパッケージング手法ということで、『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』の開発事例を話しました。制作課題がどのようなものだったか、こんなだったよ、と。あったあったリストを作って、そこから何を入れようか、とか。

──あったあったリストって、なんです?

鈴井 ノスタルジーをテーマにしているので、あの頃のゲームの思い出ですね。たとえばバックアップ電池が切れるとか、猫にリセットボタン押されるとか。

──ここに「世界一有名なヒゲのおじさんに友情出演してほしい」とか書いてあります。

鈴井 それはたぶん有野さんが言ったんですけど、有野さんの要望はできるだけ入れてあげたい。さすがにヒゲのおじさんは無理でも(笑)、ヒロインは必ずさらわれるとか、(土管で)ワープしまくるとか。そういう思い出の共通体験を集約していこう、っていうコンセプト。

──それがあの下画面の“部屋”に集約されている。

鈴井 母親とか友達とか雑談、攻略本、電話っていう、当時のメタなネタが全部入ってる。そういう構成にしました。先ほども言いましたが、取説も時代ごとに色の感じが変わっていくような部分まで再現することで、あの頃ゲームソフトを買ったときの喜びとか楽しさが追体験できる。

──収録ソフトのラインナップにもそのへんのことが表現されていますね。

鈴井 そうです。『ラリーキング』はSPバージョンも入っていて、ようするに懸賞ソフトですよね。『スーパーマリオブラザーズ』にはオールナイトニッポン・バージョンがあったし、『グラディウス』にもアルキメンデス・バージョンとかあったじゃないですか。

実際に挙げられた「あったあった」。「世界一有名なヒゲのおじさんに友情出演してほしい」は残念ながらボツになった。
実際に挙げられた「あったあった」。「世界一有名なヒゲのおじさんに友情出演してほしい」は残念ながらボツになった。

──あったあった!

鈴井 そういうのがこのゲームの中にも出てくることで、プレイヤーに「あったあった!」と思ってほしい。

──わたくし、思うツボです。

鈴井 『スタープリンス』とか『ガディアクエスト』はあの頃らしいRPGの再現で、『ハグルマン』はシリーズを重ねるごとに進化していく様子の「あったあった感」をやりたかった。さらに言うと、『有野の挑戦状』1作目の全体テーマは「ソフトの進化」で、2作目は「ハードの進化」だったんです。だから2作目に収録した『ウィズマン』はゲーコン用ソフトだし、『無敵拳カンフー』はゲーコンのライバル機(という設定)のENTER-M2000用のゲームだったりするんです。

田中 だからドットの発色もゲーコンとはちょっと違うし、音源も違うんですよ。

鈴井 『ガンデュエル』とか『トリオトス』はコンピュータミニ(※ゲームボーイのようなものという設定)の白黒機用ソフトからカラー機用ソフトになって、最後はスーパーゲーコン(※スーパーファミコンの……以下同じ)になりましたよ、っていうハードの進化の変遷をストーリーで追いかける構成にしてね。

──現実とはパラレルな歴史を作ってしまった。

鈴井 この時期にこういう出来事が起きたよね、っていうのを全部年表にして、それを元に各ソフトの発売日とか、ソフト同士の関係性みたいなものをシナリオとして起こしていって、そこに例の「あったあった感」を盛り込むことで、ゲームに詳しいユーザーが遊んだら「これはあのゲームのことじゃない?」なんて推理できるような、そういう整合性が取れるように。

──ひゃあ、それは大変な作業だったでしょう?

鈴井 でも、楽しかったです!

──ですよねえ〜。

『有野の挑戦状』『有野の挑戦状2』の制作にあたって作られた架空年表。
『有野の挑戦状』『有野の挑戦状2』の制作にあたって作られた架空年表。各ハードやソフトの発売日だけでなく「名人の出現」「ウソ技」「話題作の発売延期」などさまざまなイベントが設定されている。

■架空なんだけど本当にあったような気持ちになる

鈴井 楽しくなかったら、こんな手間のかかることできないですよ。自分の中学時代、『ファミマガ』とか『ファミ通』とか買ってきて、蛍光ペンでソフトの発売日リストに色をつけて、友達と「来週これ出るんだぜ〜」って言ってた、あの感じ。それを思い出しながら作っただけなんで、なんかもう本当に、自分が楽しかったことを年表に書き起したっていう感じですよね。

──でも、懐かしさだけで作られているわけでもなくて、下画面のゲーム部屋の役割りとか、チュートリアル的な部分、つまり遊びやすさにもすごく気配りがされたゲームだ、という印象を受けました。

鈴井 ありがとうございます。そのいちばんわかりやすい例が「アリーノーからの挑戦」だと思うんですが、有野さんをモデルにした「魔王アリーノー」っていうキャラクターを立てて、これにチュートリアルとしての役割りを持たせるようにしています。

「アリーノからの挑戦」で表示される挑戦内容の解説画面。
「アリーノーからの挑戦」で表示される挑戦内容の解説画面。この解説を読み、挑戦することでゲームのテクニックを身に付けることができる。

──アリーノーからの4つの挑戦をこなしていけば、ゲームの遊び方が自然に身についていく。

鈴井 昔のゲームは知ってるから親しみやすいけど、新しいゲームはおもしろさに気づく前にやめてしまうことがあるんですね。それではもったいない。だから、まずはこの4つの挑戦をやればゲーム性がだいたい理解できて、あとは自由に遊べるようになってストーリーが進んでいく、そんな構造にしました。

──レトロゲーム風とはいえ、遊ぶのはこれが最初なんですもんね。

鈴井 あとは……架空の会社のロゴも作りましたし、各ゲームの広報戦略まで決めましたね。ゲームを開発して、それに対するリアクションまで作って、裏ワザと攻略法があって、それをパッケージにして流通させて、そういう実際にゲームが世の中に広がっていくリアリティを感じさせるような情報量を詰め込んでいく。

販売された『ゲームファンマガジン』に掲載された『ハグルマン3』の広告
販売された『ゲームファンマガジン』に掲載された『ハグルマン3』の広告。
GEARSなら「ワクワク量産中」、『コズミックゲート』のTOMATOなら、「ゲームのビタミン」など、メーカーのキャッチフレーズも存在。

──いや、ほんと“あの頃”の詰め込みっぷりがハンパではないです。

鈴井 この『課長は名探偵』なんかも、グラフィックを見ると『ファミコン探偵倶楽部』っぽいかもしれないけれど、必ずしもそれだけを再現しているわけではなくて、『さんまの名探偵』だったり、『探偵 神宮寺三郎』だったり、『オホーツクに消ゆ』だったりというように、同じジャンルのゲームがきれいに混ざり合ったようなものにしたいな、っていう思いで作っています。

──『トリオトス』なんかもそうですね。

鈴井 ええ。『テトリス』は4じゃないですか(※テトリスの語源となった「テトラ」はギリシャ語で「4」の意味)。だったらぼくらは「3」で勝負しようってことで、ブロックのピースを3つにして、なおかつ『コラムス』でもなく『テトリス』でもないゲーム性で、気持ちよく爽快感もあって、しかも既存の作品の特許を侵害しないようなゲームシステムを作る。そんな条件を全部クリアしたっていう。

──また、ずいぶんとハードルの高いことを(笑)。

鈴井 難問ですよねえ! でも、架空なんだけど本当にあったような気持ちになるっていうところを目指して、そのためにはゲームの中身も大事ですが、その外側を取り巻くパッケージ構造がすごく大事だったと思ってます。……これもね(と『無敵拳カンフー』の開発資料を指差しながら)楽しかったよねえ。『カラテカ』でありながら、『スパルタンX』でありながら、他のゲームでもあるみたいな。斜めに飛ぶところはあのゲームにあったけど、それを使って他の敵も吹き飛ばせるのはこのゲームのオリジナル要素だとか、とてもただ単に既成のゲームを真似ただけっていうようなものではなくて、ちゃんとこのゲームならではの気持ちよさが入ってる。

──いやあ、10年も前にやった仕事をいまでもこうして生き生きとお話されていることに、驚かされます。それだけ鈴井さんというか、インディーズゼロという会社にとって重要なプロジェクトだったのでしょうね。

■人生でシューティングを作るチャンスがあるとは!

佐々木 『無敵拳カンフー』って、疑似対戦できた?

鈴井 できます。佐々木さんが「対戦させてくれ」って言ったんですよ(笑)。2P VERSUSモードでありの少年と対戦できますね。あと、『トリオトス』も疑似対戦できる。

──あれは本当にありの少年と戦ってる感じがしますね。

鈴井 有野さんの声──ボイスが入ってるからね。これぜーんぶゲームの中のデータとして、この場合にはこのセリフ、この条件を満たしたらこのセリフ、というふうに全部埋め込んであるんです。なのでゲームが完成したからそれで終わり! じゃなくて、そのあと判定条件を全部埋め込んで、ボイスと対応させていったりして……どうやってぼくたちこれ作ったんだろうね?

──自分たちでもわからない!(笑)

『スタープリンス』での有野さんの音声出力仕様書。
『スタープリンス』での有野さんの音声出力仕様書。ゲームの状況に応じてどんな音声を出力するか細かく設定されているのだ。

鈴井 この『ウィズマン』だって、待ってるとデモグラフィックが流れるようにしようって言って、ちゃんと流れるようになってるし、あそこのコーヒーブレイクタイムの演出も何種類も入れたもんね。これなんかはテクモさんの『忍者龍剣伝』とか、他のゲームでもやってたようなちょっとシリアスなストーリー表現とか、そういう感じを出そうとして、でも、ラストにどんでん返しがあったりとか。

──『ハグルマン3』ではいきなりハグルマンレディが出てきたり。

鈴井 そうです、裏切者でした。『2』は背景がビューって上がっていくんだよね。そこだけちょっと『ロックマン』的な。あらゆるものが混ざっていく。そんな感じで、中も外も含めておもしろくなるといいなっていう。

──これは発売から時間が経ってるから、これだけいろいろ教えていただけるんだと思います。

鈴井 そうですそうです。発売直後のプロモーション・インタビューでは、こんなことまでは言えません(笑)。

──とにかく『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』と『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』、この2本を作ったことで、会社としてもかなり経験を積まれたんじゃないですか。

鈴井 そうですね。短期間にいろんなジャンルのゲームを作る機会を得たのは、ありがたかったですね。他社さんでアクションパズルを作ったりもしていたので、そういう経験は若干ありましたが、いまどきシューティングゲームなんて、こんな機会がなかったらまず作れないですよ。

──ああ、シューティングはいまはジャンルとして主流じゃなくなってしまいましたもんね。

『スタープリンスSA』の画面
『スタープリンスSA』の画面。『1』で通常のカセットバージョンが収録。『2』ではこのスコアアタックバージョンが収録された。ゲーム発売元として設定されているTOMATOは、ナムコが子会社として運営していた「イタリアン・トマト」が元ネタになっている。

鈴井 開発当時、みんな口々に言ってたのは「人生でシューティングを作るチャンスがあるとは、夢みたい」ってこと。パズルゲームも、特許があるとかそういうのを乗り越えて、どうやって作ればいいかということを学びましたから、とにかくお金には代えがたいものを得られたと思っています。

第5回へ続く

●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.
●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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