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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❺

こだわり過ぎる会社 インディーズゼロ 編

第3回:ゲームが作られ流通するまでを閉じ込めたゲーム

※取材・文:とみさわ昭仁
※撮影:鈴木昭寿
※編集:山本直人(株式会社アンビット)
取材協力:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
     有限会社インディーズゼロ
『有野の挑戦状』のゲーム開発資料 インタビューで見せていただいた『有野の挑戦状』の実際のゲーム開発資料の数々。

■昔のゲームの嫌な部分を真似しても意味がない

──ここでドット絵というか、グラフィック全般に関するお話をきかせてください。たとえば、この『課長は名探偵』は『有野の挑戦状2』の方に収録されているゲームですが、皆さんの似顔絵がすごくいい味を出してるんですよね。

『課長は名探偵』の各キャラクターのドット絵デザイン
『課長は名探偵』の各キャラクターのドット絵デザイン。
有野課長だけでなく『ゲームセンターCX』のスタッフや、インディーズゼロの面々が登場。

鈴井 これが内山さん、佐々木さん、(バンナム当時の)石川社長もいるし、(番組プロデューサーの)菅さんもいるよ。みんな似せるように一生懸命描いたよね。

田中 これをファミコンでやれと言われたら、制約があって厳しいんですけど、ニンテンドーDSはV-RAMの領域が広いんで、技術的にはそれほど大変ではありませんでした。

鈴井 そこは楽だったよね。半分嘘っていうかね。

──嘘?

鈴井 ニンテンドーDSのカラーパレットを使いながらも、ファミコンのときのような色数の少ないパレットをベースにしよう、ということです。スポイトで抽出した色のデータ値をベースに、ちょっとDS用の発色の調整をするけれど、実際のファミコンの52色だけを使ってグラフィックを描く、っていうふうにやったんです。

田中 手間はかかるけど、絵を描くには余裕があるので、ファミコンのハードで開発していたときよりは、ずっと仕事がしやすいんです。

──それであのファミコンらしさが出た。

田中 いちおう言い訳としてはファミコンではなくて、このゲームの世界で流行している「ゲームコンピュータ」っていうオリジナルのハードなんです。通称は「ゲーコン」。

鈴井 だからぼくたちもそれ用のゲームを作るときに、昔のファミコンソフトの嫌な部分まで真似しても意味がないでしょう。たとえばスプライトがたくさん並ぶとキャラクターがチカチカして見えなくなるとか、操作性が無駄に悪いとか、そういうマイナスの部分まで再現するのではなくて、楽しかった部分だけを美化して、思い出の中の8bitっていうものを作ろう、と。

──ゲーム開発の作業工程の中で、グラフィック作業が占める割合って大きいですよね。ゲーム in ゲームという形式をとると、企画も複数考えなきゃいけないし、グラフィックもゲームの数だけ描くことになります。だから、グラフィックチームの作業量が膨大だったのではないか、と思うんですけど。

鈴井 まあ、田中はファミコンのチップだとどのくらいの絵を描けばいいのかを知っていましたし、松本もゲームボーイアドバンスの時代からずっとドットを打っていた人間なんで、このくらいはやってくれるだろうなって期待感もありましたし、もうひとり、すでに退職していまはフリーになってるんですけど、シューティングが得意な武田ってやつがいまして、彼ならシューティングはこれくらいの仕事をこなしてくれるだろうな、とか。もっと言うと武田は絵を描くだけじゃなくて、元々ディレクターをやってたんですよ。だからレベルデザインまでやってくれる。松本もその点では同じ能力がある。

──昔はそうでしたね。少人数で開発するので、絵を描く人がプランニングもやったり、プログラマーが音楽も作ったり。

鈴井 そうですそうです。これまでぼくらは下請けのソフトハウスとして、ゲームの中のドット絵を作っていればよくて、取説とかパッケージ周りのアートワークはメーカーさんがやってくれたりしました。でも、『有野の挑戦状』では、そうした部分まで自分たちの仕事としてやるので、正直「キツイなあ……」とは思いましたが、ゲームが出来て、パッケージも作られて、ゲーム雑誌で紹介するためのレイアウトのことまで考えて、という工程をすべて自分たちで体験できたのはおもしろかったし、とても有意義でした。

■ゲーム進化の歴史を再現したグラフィック

──『有野の挑戦状』には、すでに『からくり忍者 ハグルマン』がシリーズ『1』『2』『3』と3本も入ってますね。これは作業を軽減するためでしょうか?

鈴井 というよりも、ゲームの進化の歴史を体験してもらうために、あえてそうしてるんです。

田中 グラフィックは見た目にもわかりやすい部分なので、『ハグルマン』の数ヶ月後に『2』が発売されるなら、当然、前作よりもグラフィックが少しゴージャスになってるはずだよね、って。

──ああ、そういうことか!

田中 『1』の段階では背景のチップも2色くらいしか使わないでおいて、次にパワーアップした『2』が出たぞ! みたいなことを企画の最初の段階で決めておきました。だから『1』では簡素に描かれていた歯車が、『2』ではもっときれいになる。あのー、ファミコンは時期が経つと黒の使い方がおもしろくなってくるんですよ。

──それはどういうことでしょう?

田中 たとえば『悪魔城ドラキュラ』とか上手かったですね。それまでのゲームは、背景を1枚のタイルで普通にパタパタとやっていたのが、黒のヌキ色を活かした、より重厚感のあるものになってるんです。その後、他のメーカーでもそういう作品が増えていった時期がありまして、その雰囲気を『ハグルマン2』でも再現してみたわけです。

鈴井 そのへんは最初に全部決めてたね。それを実現するためには、こういうふうに絵を描いてほしいって。そうすると、先ほどとみさわさんがおっしゃった「作業を軽減する」ことにもつながります。

──少しづつグラフィックが豪華にはなるけれど、流用できる部分もある。

鈴井 そうです。これとこれのデータは共有できるから、両方合わせても3ヶ月半あれば作れるだろう……とか、パズルのようにやってました。

『からくり忍者ハグルマン』『からくり忍者ハグルマン2』のドット絵データ
『からくり忍者ハグルマン』『からくり忍者ハグルマン2』のドット絵データ。
イロハニ…の扉やキャラクターは流用しつつ、背景用パーツが増えている。大きな歯車などの質感に注目。

『ハグルマン3』のドット絵データ
『ハグルマン3』のドット絵データ。
ゲームデザインそのものを変更し、さらにキャラクターデータが増えた。

田中 『ハグルマン』なんかは……これはいまならもう言えることだと思うんですが、プログラム的には『1』も『2』も同じもので動いてるんですよ。で、『1』はあえて横方向へのスクロールしかさせていなくて、『2』では高さ(縦方向へのスクロール)もある。そういうところでまったく別の2本のゲームが入っているように見せておいて、実は開発の労力的には1本分だという。

鈴井 当時のゲームは、そういうものが多かったんです。ある有名なアクションゲームでも『2』は『1』のマップを変えただけ、なんていうのがありました。それはあらかじめ想定していて、逆順で作ったっていう話なんですけど、田中とかはそれをいちいち説明しなくても、1言えば5くらいわかってくれる。だから、これほどのスピードで作れたというのもありますね。

■実際のレトロゲームよりレトロっぽく見えるように

──このプロジェクトで、田中さんはおもにどういう作業を担当されました?

田中 『ハグルマン』では、『1』『2』『3』のドットを描いています。あとは『ガディアクエスト』の背景とキャラクター。モンスターデザインは松本です。

鈴井 あと、松本はパッケージの絵なんかも描いたよね。

田中 基本の『ハグルマン』のキャラクターと、背景のチップは全部自分でやりました。

鈴井 それ以外にも、田中はドット側のチーフみたいなことをやってくれていて、他のゲームで使うアルファベットフォントも、これを用意して共通でこれ使おうぜとか、基本パレット用意したからみんなこれ使って、みたいなまとめ役をしてくれたので。

──それは頼もしい存在です。

鈴井 ゲーム外のUIデザインとか、外側の世界とか、それぞれのタイトルでこんなことをしたいっていうのを伝えながら、一緒に作っていった。みんなが自分の担当以外のゲームをかなり遊んで文句を言い合って、「こうしたほうがよくない?」とか、流動的に口出しをしながら全体をみんなで作っていったんですよ。

──ファミコン時代よりもいまは格段にゲーム作る作業が専門化、細分化していると思うのですが、お話をきいていると、まるで別の世界のようです。開発機材が発達して、作業の風通しが良くなった、ということはありますか?

田中 そうですね。たとえばマップを作るにしても、当時の環境だったら1画面1画面を作って、つなぎ合わせて、みたいに面倒なことをしていたんですが、いまはでっかいビットマップをベースに、Windows上でバタバタと当たり判定つけて……というふうに作業が軽減できたり、歯車の回転アニメを作るのも、以前ならひとつひとつ角度の違うドットを打っていったんですが、いまはPhotoshopで複製して角度を変えたものをグラフィックツールに落とし込んだりとか、簡単にできます。

鈴井 当たり前だよね。当時の機材の制約や開発の苦労までは、お客さんも求めてないですから(笑)。

田中 制約の再現をしたとすれば、色数と、解像度と、雰囲気と、みたいな。

鈴井 『ハグルマン』は、パレットひとつにプラス赤を重ねたオブジェで持ってるっていう設定で。他のキャラより1色多めに入ってるとか、そういう自分たちのお約束を作って。

──設定で(笑)。

田中 ファミコンだから、1スプライトは3色まで。でも、主人公だけは特別に1色、1スプライト多く持ってる。他のキャラクターはそれがないのでみんな3色で描かれている、みたいな設定。

鈴井 そういうことの積み重ねが、実際のレトロゲームよりも、よりレトロっぽく見えるような仕上がりにつながっているんだと思います。

──むしろ、余計にひと手間かかってますね。そうした作業工程をおききすると、やっぱり半年でこれをよく仕上げたなあと(笑)。

鈴井 1ヶ月に1本ゲームを作ってるようなもんですからね。いちおう2ヶ月かけて作って、3ヶ月目にバランスをとって、というくらいの感覚ではあったんですが、3チームに分かれて、企画は兼務とか、そんな感じでギリギリのスケジュールを引いてまとめました。

「ハグルマン」のドット絵デザインの過程
『ゲームセンターCXミュージアム』(2008年3月)で販売された『ゲームファンマガジン』に掲載された「ハグルマン」のドット絵デザインの過程。
最後に2つめのキャラを重ねて5色にしているのがわかる。

第4回へ続く

●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.
●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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