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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❺

こだわり過ぎる会社 インディーズゼロ 編

第2回:あの頃のゲーム状況を再現した6ヶ月間

※取材・文:とみさわ昭仁
※撮影:鈴木昭寿
※編集:山本直人(株式会社アンビット)
取材協力:株式会社バンダイナムコエンターテインメント
     有限会社インディーズゼロ
インディーズゼロのお三方 当時の開発資料を広げて解説するインディーズゼロのお三方



■しっかり遊べるゲームが10本も収録されている

──たしか企画会議の様子を番組で放送していたとき、「ミニゲーム集はどう?」という提案に対して、佐々木さんが「ミニゲーム集にすると開発期間が延びますよ」と。そんなふうに返答されていました。でも、結果的に『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』はミニゲーム集に近いものになりましたよね。それはなぜでしょう。

佐々木 それはミニゲーム集という言葉をどういう意味にとらえるかだと思います。パーティーゲームで100本近く収録されているものなんかがあるので、ミニゲーム集にするって言うと、それくらい入っていてもおかしくないんじゃないかって見られたりすることもあるので。

鈴井 たとえばそれが30〜40本だったとしても、それだけの数のミニゲームを作るのはそんなに簡単なことじゃないです。そういうゲームをあらかじめ作っている会社だったら、流用できる部分もあるかもしれませんが、当時のうちはゼロベースだったので。

──10本っていうのが現実的なセンだった?

鈴井 10本でも精一杯やったつもりだったんですけど、そもそもミニゲームではなくて、しっかり遊べるゲームが10本も収録されている、というつもりで作りましたから。

──たしかに。全然ミニゲームじゃないですね。

鈴井 それぞれ普通に何十時間も遊べるし、エンディングもありますし。「ゲーム in ゲーム」って名称は佐々木さんが発案者でしたね。誰かが「ゲーム内ゲーム」って言ったら、佐々木さんが「ゲーム in ゲーム」って言い換えて、おお〜なんかいい響きじゃない? って。

ゲーム内ゲームの概要が書かれたプレゼン資料
ゲーム in ゲームの概要が書かれたプレゼン資料(CEDIC2012で公開)。
ゲームの進行に沿って遊べるゲームが増えていくシステムとなっている。

──1本1本のゲームがよく出来ているということもあるし、部屋の中で2人がゴローンとしていて、棚にゲームカセットを取りに行ったり、ゲーム雑誌を見たりとか、ゲームの枠組みがカチッと作られているから、ボリュームが少ないなんて印象はまったく受けません。

鈴井 そういう風に必死に作りました(笑)。

ゲーム選択画面
メニューの「ゲーム選択」を選ぶと、主人公がゲームのしまってある棚に取りに行く。そしてゲーム選択画面へ移行する造りになっている。

──こういう構成のゲームだと、つい、家の外に出るとか、ショップに新作ゲームを買いにいくとか、そういうイベントのアイデアも入れてしまいがちですよね。

鈴井 そこをグッと我慢して、部屋の中での出来事の密度を上げていくことで、完結するように努力したんです。部屋に置いてあるゲーム雑誌に裏技とか小ネタを入れたりしてね。

ゲーム雑誌の選択画面
ゲーム雑誌の選択画面。ゲーム進行に応じて冊数が増えていく。
その時代背景に応じたジャンルのゲームが特集されているのだ。

■あの頃のゲームの平均値を作る

──それぞれのゲームの出来もいいのですが、その取扱説明書がまたよく出来ていましたね。

鈴井 うちの会社には、ぼくの私物なんですけどファミコンの取説とか、当時のものがすっごいたくさんあるんですよ。だから、何年頃の取説はまだ2色刷りだったので、このゲームの取説もこんな感じの色にしようとか、当時の質感まで再現して。で、あとから出てくるゲームの取説は色数が増えたりして。

──パッケージゲームの進化の追体験ができる。

鈴井 最初に、収録するゲームのタイトル名と、こんな要素を入れたいって概要だけ決めたら、あとは歴史年表というか、あのゲームの中の世界でどんな時間軸があって、現実の世界と比較したらどんなふうに時代が進んでいくのか、そういうところをけっこう作り込んでいったんですよ。シナリオだとか会話の流れを作ったのはそのあとですね。

ゲーム選択画面から見られる取扱説明書の画面
ゲーム選択画面から見られる取扱説明書の画面。
ファミコン初期の横長のデザインイメージで作成されている。

 取扱説明書画面の仕様書
取扱説明書画面の仕様書。
時代が古いゲームの取扱説明書は2色印刷になっているなど、時代を反映する芸が細かい。

──収録されてるゲームも、いかにも「あの頃こんなゲームあったよね」って感じのものになっています。わたしが具体名を出して言ってしまうのはいいことじゃないかもしれませんが、ああ、これは『ギャラクシアン』だな〜とか、そういうふうに元ネタを探す楽しみもあります。

鈴井 開発現場での統一見解としては、1つのゲームに、少なくとも3つはオマージュしようって決めてました。何か1つのゲームにだけそっくりなものはやめようと。たとえば『ハグルマン』だったら、『忍者じゃじゃ丸くん』にも見えるし『影の伝説』にも見えるし、っていうハイブリッドな感じですね。それでいて、ゲーム性自体はちゃんとオリジナルなものを作る。

──ある写真家が、たとえば日本人の女性の顔を何十枚も撮って、それを透過させて重ねるとボンヤリとした日本人女性の平均的な顔が出来るという、そんな作品を見たことがあるんですけど、それに似たものを感じます。80年代にたくさん作られた横スクロール忍者アクションゲームの平均値、みたいな。

鈴井 ここも具体名は伏せますが、ある有名な作品をモデルにしたゲームを作ったときは、ちゃんとそのオリジナルの作者にシナリオチェックをしていただいたんですよ。あまりにも似すぎることがないように。それと、ゲームの中に登場するゲーム機だってファミコンではないし、セガマークIIIでもない。

ゲーム中に登場するゲームハードのデザイン
『2』の開発資料より。ゲーム中に登場するゲームハードのデザイン。

──色が赤と白で、形が横に長い。ファミコンとセガの中間をとった感じだ!

鈴井 基本はあの頃のゲームを作ってきた人たちへのリスペクトで出来ていますから、各方面になるべく迷惑がかからないように。

──現場の開発も大変だったとは思いますが、プロデューサーもいろいろと気を揉んだ仕事だったようですね。

鈴井 ひとつひとつ確認は入れていきましたね。『トリオトス』も、先行する同種のゲームの特許に抵触しない、限られたルールの中でおもしろくするっていう条件で企画を練りました。

『トリオトス』のゲーム画面
『トリオトス』のゲーム画面(『2』収録)。
ゲームコンピュータミニ用のゲームという位置付け。

■やりたいことをやりきった6ヶ月

──開発期間のことも教えてください。最初にプロジェクトはどのくらいの期間を想定してスタートしたんでしょう?

鈴井 たしか最初は9月に出したいって言われて、でも、それはスケジュール的に難しいからギリギリまで伸ばしてほしい。でも、年末商戦にかかると大変だから、それより少し前には売りたい。それでバンナムさんと相談した妥協案が11月でした。ということは、開発にかけられた時間は6ヶ月くらいですかね。

──短いなー。

鈴井 その中でベストを尽くすためには、当初、作るつもりだったゲームの本数を絞り込んでいって、本当はベルトスクロールアクションの『ヤッタロウ』っていうのも作りたかったんですけど残念ながら早めに諦めて、それでもかなり粘って様々なモードを入れて単独でも遊べるようにして……っていうことをずいぶんやりました。

──ゲームがたくさん入っているとデバッグも大変でしょう。

鈴井 マスターアップの寸前にですね、『スタープリンス』っていうシューティングゲームで重大なバグが見つかっちゃったんですよ。異常に得点がいっぱい入っちゃうみたいな。

──それは困りますね。シューティングはスコアが命みたいなところがあるから。

鈴井 さすがにそれは直したいって現場のプログラマーが言って、もう明後日には工場にROMを入れなければならないというようなタイミングだったんですけど、佐々木さんが「とにかく1ヶ所だけ直させてください!」ってお願いしてくれて。「直してもいいけど、そのあと何十人かが24時間セルフチェックした、っていう動作実績がないと工場には入れられないんで、あなた方も徹夜でチェックをしてくるなら直してもいいですよ」って言われて、「しまーす!」って。

──最後の粘りどころですもんね。

鈴井 それで、みんな和室で転がりながら延々と24時間ゲームをやってたのは覚えてます。

──発売は11月15日でしたね。

鈴井 そこから逆算すると、9月にはマスターアップしなゃいけなくて、でも9月ってことは、3月からスタートしてやっぱり6ヶ月しかない。

──そんな短期間でこのボリュームはすごいです。

鈴井 もう二度と作れない。これ、当時のカレンダーですけど、ゲームショーの日程とか、スタッフ割当てとかも全部ビッシリ書いてあって、これぐらい緻密にスケジュール管理しないと終わらなかった。ただ、すべては「やりたいことをやってるんだからしょうがないや」って感情で、ひたすら楽しかったですね。

第3回へ続く

●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.
●『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2』
ⒸFUJI TELEVISION ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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