ファミ熱!!プロジェクト

MENU

ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❹

ユウラボさん

第2回:攻略本から発想したレベルデザイン

※取材・文:とみさわ昭仁
※撮影・編集:山本悠作(アンビット)
※取材協力:株式会社MEGAROAD

フェアルーン2 ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works

■2倍のボリュームになった『フェアルーン2』

──そして『フェアルーン2』が登場しました。これについても、その開発に至った経緯を教えていただければと。

ユウラボ 同じフライハイワークスさんですけど、『フェアルーン』(以下『1』)を作っているときから『フェアルーン2』(以下『2』)も作りましょうというお話をいただきました。ぼくとしては、まだ『1』が売れるかどうかもわからないのにその続編をというのは、ちょっと待ってくださいと言ったんですよ(笑)。それで、『1』が発売されたらわりと好評だったので、これなら『2』を作ってもいいかなと。

──おそらくパブリッシャーさんとしては、『フェアルーン』が任天堂の携帯ゲーム機と相性がいいという確信があったんでしょう。きっと話題になるはずだと。

ユウラボ そうかもしれません。

フェアルーン2
ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works
『2』は『1』よりも地形の角や端が少しだけ丸みを帯びて、グラフィックが慎ましくパワーアップ。ドット絵全盛期の進化スピードに忠実?

──でも、ユウラボさんとしては、『2』を作るなら当然ゼロから組み立てていかなければならない。グラフィックは多少流用できたとしても。ストーリーなり企画なりはイチから考えていかなければなりませんよね。『2』の開発期間はどのくらいでしたか?

ユウラボ ほんのメモ書きから数えると2年弱くらいですね。

──ゲームの開発期間としては長いほうじゃないですか。

ユウラボ ぼく自身の実務は9ヵ月くらいで終わってるんです。そのあとはプログラマーさんが完成に向けて仕上げていく時間ですね。ぼくはその間、他のアプリの企画書を書いたり、ゲームを作ったりしてました。

──『2』はご自分の思った通りのものを作らせてもらえましたか?

ユウラボ だいたい企画はそのまま通っています。パブリッシャーさんからの要望は、『1』の2倍のボリュームにしてくれ、という程度です。あとはお任せっていう。

──外枠だけは決められたけど、中身は自由にやらせてもらえた。

ユウラボ そういうことです。

──Flash版やスマホアプリを作っていたときは趣味の延長だったと思いますが、ニンテンドー3DSで作るとなったら、これはもう完全に仕事ですよね。ちょっと下世話な話ですが、開発資金のことなども重要になってくると思うのですが。

ユウラボ 以前作っていたアプリの売り上げが毎月入ってきていたので、基本的にはそれをたよりに開発を進めていきました。

──じゃあこれに関してもとくに波風はなく。

ユウラボ 開発期間が長くなってしまったので、そうすると経済的にはやっぱりきつくなってきますよね。アプリの売り上げも、新作を出せなかったら当然下がってきますし。だから早く完成させるために頑張ったのですが、最終的に2年かかってしまって、そこは反省点としてありますね。

■ダンジョンのようなフィールドマップ

──『2』の反響はいかがでしたか?

ユウラボ まあ、続編というのは基本的に前作をやった人がやるものですから、『1』よりは売れないだろうとは思っていました。

──販売本数……は言えませんよね(笑)。3DS版の『2』は800円という、ゲームのクオリティを考えたら十分お得な価格だと思うのですが、スマホ版が無料だったから、そこで購入をためらう人はいたかもしれませんね。

ユウラボ だから作っているときは、『1』をやった人が楽しめるようにするということだけ押さえつつ、あとはもうこのチャンスにやりたいことをやってしまおうと。

──それはすごく感じました。ユウラボさんらしさが全開になってるというか。

ユウラボ ちょっと難度の高い謎解きもありますが、いまは攻略サイトとかもあったりするので、そこを見てもらえば、クリアはできるでしょう。アクションが難しくてクリアできなくなるような要素は極力入れないようにしています。

──そうですね、わたしのような年配のゲーマーでも快適に遊べています。

ユウラボ それでも、マップが広すぎたとか、道に迷って子供が泣いた、なんてツイートが流れてるのを見たりしました(笑)。

開発用の地上と地下のマップデータ
ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works
開発用の地上と地下のマップデータの一部を見せてもらいました。
こうしてつなげて見るとマップ自体は狭く見えるのですが、実際に遊んでみると……。

──自分がプレイした体験で言うと、作業量とかメモリ容量とかいろんな制約があるのでしょうけれど、フィールドマップが全体的に緑色なので迷いやすい、という気がしました。とはいえ、このフィールドを迷いながら探索していく感じが『フェアルーン』シリーズのおもしろさでもあるわけですが。

ユウラボ これはブログでも解説しているんですが、『2』の地上マップは「地上」と言っておきながら、構造はダンジョンのような迷路になってるんですね。それで階段から地下ダンジョンへ降りていくと、こちらは逆に複雑な構造にはなっていないんです。

──ああ、だからフィールドで道に迷う気がするんですね。

地上のマップとその構造
ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works
左は地上のマップ。一見すると開放的な雪原なのだけど、この構造をブロックで図示したのが右の図。
地上なのに、地形はまるでダンジョン!

地下ダンジョンのマップとその構造
ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works
左は地下ダンジョンのマップ。壁の中は見えなくて真っ黒で、見た目は閉鎖的。
でも、こちらも構造をブロックで図示してみると、地下ダンジョンのほうが意外にも単純な造りで開放的。

──3DSをひらいて、上画面がゲーム中のフィールドで、下画面にマップ表示されているのが、遊びやすくてよかったです。

ユウラボ 3DSで作るなら、下にマップを表示しようというのは最初から決めていました。上画面でプレイヤーの歩き回ったエリアが、マップとして下画面にどんどん表示されていけば、自分がどこまで話を進めているかの指標にもなります。

──行き詰まっても、マップに黒いところが残って入れば、そこへ行くことで道がひらけたりしますもんね。

上下2画面を活用してマップが見やすく遊びやすい3DS版
ⒸSKIPMORE ⒸURARA-WORKS ⒸFlyhigh Works
上下2画面を活用してマップが見やすく遊びやすい3DS版。
自分がどれだけの画面を歩いてきたか目に見えてわかる楽しみもあります。

■“間”を省いた密度の濃いゲーム

──『2』で反省点というか、ここをもう少し作り込みたかった、というようなところはありますか?

ユウラボ もう少しコンパクトに作りたかったですね。前作がおもしろかったのは、密度が濃かったからじゃないかと思ってるんです。適度な時間でエンディングまで行けるから。

──スマホの手軽さとも相性がよかったです。

ユウラボ 『2』は3DSだけど、800円でこのボリュームじゃなくて、もう少し下げて……たとえば500円くらいにして、いまよりマップの広さを減らすべきだったかもしれない。そのかわりマップひとつひとつの密度を上げれば、もしかしたら体験としてはより濃いものになったんじゃないかなと。

──やっぱりユウラボさんはコンパクト志向なんですね。グラフィックはファミコン風を維持しつつも、遊びとしてのスケールは大きくしていくのかなと思っていましたが。

ユウラボ できるだけ余分なものを排除して、コンパクトに、密度の濃いものを作ろうと心がけています。

──そういう考え方が生まれた背景ってなんでしょう。何か思い当たることはありますか?

ユウラボ うーん、ゲームの攻略って“間”がないじゃないですか。ここ行って、ここ行って、ここ行って、ボス倒してクリア。本当はそれぞれの行動の間に経験値稼ぎだったり、道に迷ったりという無駄な時間がある。

──そうですね、RPGではどうしても謎が解けなくて何日間も同じ場所で行き詰まっていたりします。

ユウラボ でも、ぼくがゲームを作り始めた頃は学生でお金がないから、ゲームソフトが買えずに、攻略本だけ買ったりしていたんです。それで攻略本を読んでると、自分の中にそのゲームの体験というのが、先ほど言った“間”がない状態で残るわけです。

──ああ、寄り道しないから!

ユウラボ そうした体験をそのままゲーム作りに反映させると、イベント→イベント→イベントの連続になっていく。あとはゲームブックからの影響もありますね。ゲームブックも「○○ページに移動せよ」とあって、移動すると「目の前に箱がある」→「開ける」とか、「道がふたつに分かれている」→「右」→「ゴブリンがあらわれた!」みたいな。つまり、イベントの間がないんですよ。

──よくわかります。ゲームを構成する要素の、楽しい部分だけを凝縮した感覚が染み付いているんですね。ぼくはいま別件の仕事で『ドラクエII』をやっているんですけど、ゆっくり楽しんでいるヒマはないから、攻略本を見ながら最短ルートで目的地を目指します。そうすると、ものすごくキツイんですよね。初めてプレイしたときは、あっちかな? こっちかな? ってウロウロしてるうちに戦闘を重ねて、レベルが上がっていくじゃないですか。

ユウラボ それでちょうどいいバランスになるよう調整されてますからね。

──それで、いまおっしゃったように「攻略の間が抜けてる」状態を意図して作られた『フェアルーン』シリーズは、ぼくがいまが『ドラクエII』で体験してるようなキツさがあるのかというと、それは感じないんですよ。

ユウラボ レベル上げの仕組みが違いますからね。レベルさえ上げればどこにでも行けるのではなくて、謎を解かないと先には進めない。逆の言い方をすれば、答えを見れば誰でもクリアできるようにしたかった、ということです。

──わあ、攻略本からの発想だ!

ユウラボ 結局、商業的なものだと30時間くらいは遊んでもらわなきゃいけないとか、そういう制約があったりしますよね。

──とくにRPGは、開発前に想定プレイ時間を決めますよね。「やっぱり50時間は遊べないと」とか。

ユウラボ そうです。でも、ぼくの場合はほぼ個人で作ってるし、もともと無料とか低価格だからその辺の制約がゆるいんです。30時間、3時間、1時間、なんなら30分でクリアできてもいいじゃないかという。

第3回へ続く

★記事に登場したゲームの情報★

※ニンテンドー3DS版『フェアルーン2』は2017年5月現在、ダウンロード版が発売中です。

ドット絵の匠
インタビューシリーズ❹
ドット絵の新作を作り続ける
ユウラボ 編

トップへ戻る