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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❸

『FF』のドット絵師 渋谷員子 編

第4回:手探りで工夫しながらのスタートだった

※取材・文:とみさわ昭仁
※撮影:木内章浩
※編集:山本悠作(アンビット)
※取材協力:コート・ダジュール 志木店
☆よしみるさん写真

■何枚組かのディスクシステムになっていた可能性も

メタルスレイダーグローリー
ファミコン後期に開発された特殊チップMMC5(メモリーマネージメントコントローラファイブ)を搭載した『メタルスレイダーグローリー』。
同チップを搭載したゲームソフトはチップの形状の都合上、従来のファミコンカセットよりも縦長となっている。

──『メタルスレイダーグローリー』は、1987年から開発プロジェクトがスタートして、ソフトの発売が1991年になります。でも、その前年の1990年にスーパーファミコンが登場したじゃないですか。焦りはなかったですか?

☆よしみる いや、それまでにずいぶん時間を費やしていたんで、もうしょうがないというか。

──まあ、いまさら引き返すわけにもいきませんね。

☆よしみる でも、いちおうは「スーパーファミコンのソフトとして出そうか」という話も少しだけ出たんですよ。

──あ、やっぱり出ましたか。

☆よしみる スーパーファミコンの仕様が明らかになってきたときに、エミュレーターじゃないけれど、そのままどっこいしょと入れられる仕様だったものですから、移植というか、スーパーファミコンの企画として出すことも検討されたんです。

──グラフィックに凝っているゲームですから、よりグラフィック性能のいいハードが登場したら、そっちへ行きたくなりますもんね。

☆よしみる そうなんですけど、これはぼくサイドの事情ではなくて、何かROM的な問題だったのか、価格的な問題だったのかわかりませんが、その話は途中でなくなりました。

──あら、残念。

☆よしみる 開発が進み、容量のバイト数が固まってきた時点でかなり大きなものになることがわかってきました。そのときに「何枚組かのディスクシステムにしようか」なんて話も出てきたりして、ファミコンかスーパーファミコンかというプラットフォーム選択だけではなく、アウトプットの仕方、どういう製品として出していくかという話も、実は二転三転してるんです。

──最終的には、特殊なMMC5というチップを積んで、けっこう大きなサイズのカセットになりましたよね。あれはやっぱり、このチップのためなんでしょうか?

☆よしみる それもあったかもしれません。あとできいた話では、MMC3でも当初の企画を実現することは可能だったらしいです。ただ、MMC5だと画面を2分割できる、つまりラスター割り込みがしやすいという利点があって、それを目的にしてゲームの構成をしていくのがいいだろう、と。そんな説明を受けた覚えがあります。

■家庭のテレビで映したときキレイに見える絵

メタルスレイダーグローリーのドット絵
美少女や美女がファミコン屈指の美しさで描かれている
『メタルスレイダーグローリー』のドット絵。

──ドット絵の表現として、とくに重視したところ、こだわったところなんかはありますか?

☆よしみる いまで言うところのアンチエイリアスには気をつかいました。ファミコンの少ない色数ですからやれることは限られてきますが、できるだけそれが可能な場所に対してはアンチエイリアスを入れるということをしています。

──アンチエイリアスというのは、ドット絵のガタガタを滑らかに見せるテクニックですね。

☆よしみる ええ。そんな本格的なものではありませんが、濃い色と明るい色が隣接しているところでは、その境界に中間色を置くという。

──そうしたシーンで、とくに印象的なカットってありますか?

☆よしみる けっこう随所に施しているんで、とくにここが! というのはないかな。まあ、キャラクターの輪郭とか、グラフィックの主線に影色が入っているものは、黒いドットの線の脇には必ず黒よりも少し明るい色を入れたりしています。

──人物の頬のところをアップで見るとよくわかりますね。

☆よしみる 黒とグレーのところだったら、その中間色にあたる濃さのグレーを入れてみたりとか、そういうのがほとんどです。

──そういうテクニックは独学で覚えたものですか? あるいは誰かから習ったとか。

☆よしみる 独学ですね。ドットを打っていきながら、自然に身に付けていったんだと思います。

──アンチエイリアスなんて、紙で絵を描いているだけでは、なかなか思いつかないことですよね。きっと、画面がにじむテレビゲームではなくて、ドットがパッキリと見えるパソコンゲームを先に体験していたから、そのことに気づいたのかな。

☆よしみる ああ、『メタルスレイダーグローリー』では、画面がにじむということも念頭に置いてグラフィックを描いてます。開発機材のモニターではなく、家庭のテレビ画面で見たときにちゃんとキレイに見えるか? そういうグラフィックにすることも、開発目標のひとつに挙げていたので。

──ファミコンは家のオンボロテレビで遊ぶものですからね。

☆よしみる 開発時のモニター上の色と、家庭のテレビとで、発色が変わってしまうのは仕方ないとしても、RGBでがっちりドットが視認できることで見栄えのするドット絵と、テレビのブラウン管で少しにじんだくらいでいい感じに見えるドット絵って完全に別物だったんで、開発前にどちらを選択するかといったとき、迷うことなく「テレビ画面のほうを優先しよう」ということで描き始めました。

■黒で描かれるべき線をどこまで活かすのか

原画の細やかな線
原画の細やかな線も、ファミコンのドット絵で線を引くと目立ちすぎてしまう。それを解決する技術とは?

──やっぱり、この『メタルスレイダーグローリー』には、奇跡的なものを感じます。もし、☆よしみるさんが筋金入りのゲーマーだったら、いろいろなゲームを見てくるなかで、自然とその作り方や表現方法を身に付けてきたでしょうけれど、今日、お話をきいた限りでは、そんなにたくさんのゲームをやっているわけではありませんでした。

☆よしみる そうですね。これは自然発生ですね。

──『メタルスレイダーグローリー』は、わたしの目には「ものすごくゲームをやり尽くした人がたくさんのゲームからヒントを得るとともに、フツフツと溜まっていた鬱憤を晴らしたような作品」に見えるんですよ。

☆よしみる ああ(笑)。

──だから、これが発表されたときは、一般ユーザーよりもゲーム制作者やゲームマスコミにいる人たちのほうが驚いたと思うんですよ。

☆よしみる そんなもんですかね。あの、グラフィックを描く際に、各要素の輪郭線を描く前に、まずは紙でこういう原画を描くんですね。

原画とグラフィック指定
ゲーム内に表示されるウインドウと同じサイズで原画が描かれている。

☆よしみる この原画を、いまのスキャナーほどの精度はないんですけど、当時はデジタイザーと呼ばれるものがあって、それで原画を読み込みます。本当に汚いジャギジャギなものだけどいちおう原画がグラフィックツール上に表示されるので、それをグラフィックの下絵としてドットを修正しながら絵を描いていきます。

──当時の技術で精一杯の作業ですね。

☆よしみる そのときに、輪郭線であるとか、髪の毛とか、そういう黒で描かれるべき線をどこまで活かすのかってことを、自分なりに追求していく。パソコンに比べて、ファミコンのドットは大きいですから、黒い線で描くと強すぎるんですよね。

──ドットの粒が大きいから線も太くなってしまう。

☆よしみる その強すぎる線をどこまで残しながら、絵の印象は変えずに調整していくか。影色とか中間色っぽいもので黒の両脇を補完してやったり、逆にドットを消して線の調子を弱めていったり。そういうふうに手探りで工夫していった結果が、いわゆる「アンチエイリアス」と呼ばれている技法だったのでしょうね。ぼくの場合は、たぶんそういうところがスタートだと思います。

──スタートにして、ドット絵の真髄でもあった、ということですね。

第5回へ続く

★記事に登場したゲームの情報★

※『メタルスレイダーグローリー』は2017年4月現在、Wii UのバーチャルコンソールWiiのバーチャルコンソールで配信中です。

『メタルスレイダーグローリー』のLINEスタンプが配信中です。
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ドット絵の匠
インタビューシリーズ❸
ファミコンで最も精緻なドット絵
☆よしみる 編

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