ファミ熱!!プロジェクト

ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❶

小野“Mr.ドットマン”浩 編

第5回:これからもずっとドットマンで行く

※取材・文:とみさわ昭仁 ※撮影:市村岬 ※協力:ナツゲーミュージアム
小野さん写真

■『アイドルマスター』から『テイルズ オブ』まで

──フリーランスになってからのことを教えてください。

小野 ぼくはドット絵しか描けませんから、会社を辞めて、さてどうしようかと困っていたところに、バンダイナムコエンターテインメントさんから連絡が来て。

──あ、前の会社から!

小野 ぼくがいたところとは別の部署ですけどね。『アイドルマスター』のドット絵を描けないか、という依頼があって、それが先ほどお見せしたやつですね。

──普通に考えたら、いま社内で『アイドルマスター』を作っているチームがドット絵も描けばいいんじゃないかと思うんですけど、それをあえて小野さんに外注してくれたというのが、素敵ですね。

小野 社内にもドット絵の必要性を認めてくれてた人はいた、ってことでしょうね。それは本当にありがたい。それで、次にラバーストラップを作りたいという話が来て。これはゲーム画面に表示されるものと同じような感じを出すために15 色使って、髪の毛にはハイライトを入れて、服に影もあって、ちょっと色を使いすぎたかな、と。

──またそんなこと言ってる(笑)。

小野 でも、ゲーム画面と違ってラバーストラップの場合は、1 色増えるごとに材料費が上がっていくんですよ。だからコストが見合うところまで減色していって、最終的には8 色までってことで折り合いをつけた。さらにパッケージもお願いしますというので、昔のゲームソフトっぽいデザインにして。

『アイドルマスター』のラバーストラップ
『アイドルマスター』のラバーストラップ。
Ⓒ窪岡俊之 ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

──この懐かしい感じはいいですね。可愛いデザインで。

小野 で、その次に来た仕事が『テイルズ オブ』の新作。

──『テイルズ オブ ゼスティリア』ですかね。

小野 それの限定版にラバーストラップを付けたいというので、『アイドルマスター』のときと同じタッチで『テイルズ オブ』のキャラを描いてくださいという依頼。さらに「テイルズ チャンネル」っていうサイトで毎月キャラを3 体ずつ配信するというので、それをまたドット絵で描いていった。

──『テイルズ オブ』だとキャラクターの数も多いでしょう。

小野 結構な作業量がありましたね。それで、『アイドルマスター』も『テイルズ オブ』もそうだけど、ぼくはその辺に全然詳しくなかったので、仕事の話をもらってからゲームを見て、キャラも覚えて、仕事をしながら勉強していった感じですね。

──シリーズが長く続いていますし、登場人物も多いですからね。

テイルズ オブシリーズのキャラクタードット絵
歴代『テイルズ オブ』シリーズのキャラクターがドット絵に!
Ⓒいのまたむつみ Ⓒ藤島康介 ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小野 それから、何をやったかな。バンダイナムコエンターテインメントの仕事ばかりやってますね。あ、バンダイナムコスタジオさんからも依頼がありましたね。ぼくが元いた部署じゃないですけどね。

──それはやっぱり、ドット絵師としての小野さんの価値をいちばん理解してくれているのが、バンダイナムコエンターテインメントさんだったということでしょう。

■『ピクセル』のラスボスは小野さん?!

小野 他には『PROJECT X ZONE』『Galaga:TEKKEN 20th Anniversary Edition』……それから、ついこのあいだはKORG とバンダイナムコスタジオが共同開発した『KORG Gadget』っていうアプリがあるんですけど、それの新ガジェット「Kamata」のロゴをやりました。

──ロゴデザインということですか?

小野 そう。あと『あそぶ!ゲーム展2』っていうイベントのキービジュアルなんかもやってますよ。

『あそぶ!ゲーム展 STAGE 2』のイベントのキービジュアル
こちらは『あそぶ!ゲーム展 STAGE 2』のイベントのキービジュアル。
小野さんが手がけたドット絵に注目!

──そうか、8bit 感のあるデザインが望まれるときには、小野さんのところに話が来るわけですね。

小野 いま渋谷のPARCO で「ファミスタ30 周年×プロ野球12 球団 SPECIAL COLLABORATION」っていうイベントをやっていて、T シャツやバッグなんかのグッズを販売してるんですけど、そこでぼくは広島カープと中日ドラゴンズのキャラというか、マスコット?

──カープ坊やとドアラですか?

小野 それをドット絵にしたデザインを提供しています。まだ自分ではPARCO へ見に行ってないんですけどね。

──あの……、いまこのインタビューをしている小野さんの背後にね、映画『ピクセル』のポスターが貼ってあって、あとでその話も聞こうと思っていたんですけど、ここまでのお話を聞いていて、まるで小野さん自身が『ピクセル』に出てくる宇宙人のようだなって。

小野 はい?

──世の中のいろんなものをドット化しちゃうのがあの宇宙人ですから。

小野 ははは、なるほどね。あのう、映画のラスボスが『ギャラガ』の敵の形をしてるじゃないですか。だから「ラスボスは小野さんだ!」って言われたりしましたよ。

──ほら、やっぱり。小野さんピクセル星人だ! それで、映画をご覧になってどうでした?

小野 まさかこんなのが映画になるなんて思わないから、びっくりしましたよ。ただ、ぼくは本編よりも最後のエンドロールでのアニメーション(※これまでの映画のストーリーが8bit 風のドット絵で再現されていく)に感動したな。

──あはは、さすがはMr.ドットマンです。

小野 あと、エンドクレジットで出演者やスタッフの名前がファミコン風に8×8 ドットの文字フォントで表示されていて、正確には文字の隙間が必要だから8×7 なんですけど、文字によっては8×6 だったり、もっと短くなったりするわけですよ。

──そうですね。

小野 きっちり並べても、ちょっと隙間が不自然に空いたりなんかして。エンドクレジットでは、そういうところも忠実に再現していたので感動しましたねえ。

──そんなところを観てる人はあんまりいませんよ!(笑

■ゲームのエクスペンダブルズ!

小野 それから『宇宙最大の地底最大の作戦』というゲームにも参加してます。現在、名古屋大学で教授をされている有田隆也さんという方が、1980 年に発表していたパソコン用の穴掘りゲームで。

LICENCED FROM Takaya Arita
LICENCED FROM Takaya Arita
ⒸMINDWARE

──『ディグダグ』の2 年前じゃないですか。

小野 そう。それで、このゲームのパワーアップ・バージョンを作るというので。パワーアップさせるといっても、今風の凝った絵にしたのではムードを壊すでしょう。それで現物を見せてもらうと、ようするに80 年代のパソコンゲームだから、それなりの絵なわけですよ。そのイメージをうまく残しつつ、現代のテイストを感じさせるように描きました。そうしたらすごく気に入ってくださって。

──おもしろそうなプロジェクトに参加されましたね。

小野 あとは、バンダイナムコエンターテインメントのカタログIPオープン化プロジェクトに参加した『タッチ・ザ・マッピー 復活のニャームコ団』というスマホ用アプリが、ついこのあいだ(6 月)にリリースされたばかりで、けっこう人気が高いみたいです。

『マッピー』の最新作
往年のクリエイターが集結して制作された『マッピー』の最新作
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc. Ⓒsuzya. ⒸCosmo Machia Inc.

──ゲームデザインはオリジナルそのままで?

小野 いや、パズルゲームですね。「カタログIPオープン化プロジェクト」ということもあり、オリジナルは踏襲しつつも、基本は二次創作ですし、スマホ用だから操作はかなり簡略化されているようです。それでおもしろいのが、設定は「オリジナルから15 年後」なんです。しかも企画した人が、この作品ではオリジナル『マッピー』のスタッフをそのまま起用するっていうのを売りにして。

──おっさんホイホイのプロジェクトですね。スタッフの平均年齢がエラいことになってるんじゃないですか。

小野 すごいですよ。だってぼくは今年59歳だし、企画担当の佐藤英治さんもぼくと同い年。サウンドはオリジナルが大野木宜幸さんっていうこれも有名な方だけど、今回は残念ながら参加できなくて、かわりに小沢純子さんがやってくれて。

──ZUNKO さん!

小野 そう。年齢はわかりませんが、××××でしょう(笑)。プログラマーだって50 歳近いはず。そういうメンバーで、ゲームのエクスペンダブルズですよ。

──いやいや、全然、消耗品軍団なんかじゃないですよ! まだまだゲームの最前線で戦っていけるメンバーだと思います!

■これからもずっと「一点入魂」

──では、最後になりますけど、これからの抱負というのを、あらためて話していただけますか。

小野 ずっとやります。ドットで。

──ドットで!

小野 ぼくは自分を「Mr.ドットマン」って呼んでいるでしょう? 職業を聞かれたときに「ドット・アート・クリエイター」って言っちゃうと、なんか水玉の印象が出てくるんですね。

──ああ、草間彌生さんみたいな……。

小野 ドットは「点」だから、英語圏では水玉のイメージがあるんですね。だから本当は「ピクセル・アート・クリエイター」って言わないといけないんだろうけど、それでも、自分は「ドットマン」と答える。ぼくはね、ずっと前からドット絵を描くときのツールはPhotoshop なんですよ。

──えっ、それは意外な答えです。

小野 仕事によっては方眼紙に描くこともありますが、ほとんどすべてはPhotoshop で済ませています。拡大すれば1 ドット単位で絵を描いていけるので。マウスでカチカチとドットを打っていけるんです。ぼくはペンタブとか使わないの。使えないっていうか、とにかくマウスで絵を描くのが好きなんですね。ペンタブでサーッと線を引くんじゃなくて、「ここにドットを打つ!」って決めてやるんで、それはやっぱりマウスじゃないと無理。だから「ドットを撃つ!」でもいいかもしれないですね。

──かっこいい!

小野 ということなので、これからもずっと「一点入魂」で仕事をしていこうと思っています。

小野さん写真

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