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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❶

小野“Mr.ドットマン”浩 編

第4回:ドット絵って人気あるじゃん!

※取材・文:とみさわ昭仁 ※撮影:市村岬 ※協力:ナツゲーミュージアム
小野さん写真

■入社してからアニメーションを学んだ

──ビデオゲームでドット絵を描くということは、動かすことが前提となりますよね。小野さんはアニメーションへの興味は?

小野 そんなに詳しくないんですよ。それでも、ぼくがこの仕事をはじめた頃のドット絵は、キャラを歩かせるのだって2 パターンとか、多くてもせいぜい3 パターン、4 パターンで動かすくらいのものだから、なんとかやれていましたよね。ただ、ものによっては普通に走って見えるようにしなくちゃいけないこともあって、そういうときはある程度アニメを知ってる人間に教えてもらったりしました。

──それは社内で?

小野 そうです。ぼくのあとから元アニメーターだったスタッフが入ってきたので、その人にアニメの基本を教えてもらったりした。キャラを「走らせる」ときは、動きのパターンを均等に割るのではなくて、前後に詰めて“タメ”を作ってやると、いかにも走っているように見えるとか。

──躍動感が出るわけですね。

小野 そのへんのことは、2 パターンの単純な動きにも通ずる部分があって、たとえば横向きで2 パターンの歩きアニメは、2 本ある足を前後に描き換えることで、チョコチョコと歩いているように見えるはずなんだけど、下手すると2 本のままでズリズリ滑ってるように見えてしまったりもするんですね。

──ええ。

小野 それで、動きを思い切って大袈裟にするっていうのかな、そこにはちょっとしたコツがいるんですよ。これはフリーになってからやった『アイドルマスター』の仕事ですけど、2 頭身のドット絵キャラクターが、ピコピコ足踏みをしたり、手をパタパタさせたりする。あるいは口をパクパク動かしたり、居眠りしてコックリしたり。

『アイドルマスター』2頭身のドット絵
『アイドルマスター』も2頭身のドット絵に!
Ⓒ窪岡俊之 ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

──なるほど、このぐらいでも十分それらしく見えてしまうもんですね。

小野 せいぜい凝ったとしてもこれに中間の動きをもう1 パターン挟むくらいじゃないかと思うんですね。だから、ぼくは昔ながらのドットアニメくらいしかできないですよ。だけど、あんまりリアルな動きにしちゃうと、ゲームらしさが失われてしまうような気もするし。

リアルすぎず、ゲームらしさが大切にされた、ドット絵
リアルすぎず、ゲームらしさが大切にされた、ドット絵なのだ。
Ⓒ窪岡俊之 ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

──小野さんは入社してからアニメーションを勉強されたんですね。

小野 そうです。いまはそういうものを教えてくれる学校もあるけど、ぼくらの頃はそんなのなかったからね。

──コンピュータも入社してから初めて触れたとか、そんな感じですか。

小野 そりゃそうです。だってぼくが入社した頃に、デザイン課の上司が「MZ-80 を買ったぞー!」って大騒ぎしていたんですから。パソコンなんて、まだ一般には普及していなかったですよ。

■ドット絵で再現する絵画シリーズ

──ドット絵にとって動きは重要ですけれど、動きがなくてもドット絵には独特のおもしろさがありますね。なんていうのか、単純化されることで生まれる魅力みたいなものが。

小野 あのね、ぼくはいまでも個人的な趣味として「絵画シリーズ」っていうのを作ってるんですよ。

──絵画って、もしかして『マッピー』に登場した……?

『マッピー』に登場した絵画
『マッピー』に登場した絵画。
小さなドット絵なのに「モナリザ」に見える職人芸!
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小野 そう、あれの「モナリザ」からはじまっていて。『マッピー』って色数は16 色って決まっていたから、それで画面全体に表示されるものを賄うんです。当然「モナリザ」もその16 色の中から色を抽出して再現しているんですね。で、会社を辞めたあとに過去の自分の仕事ファイルを見ていたら「モナリザ」のドット絵が出てきて、ああ、これをいまの自分の感性で作ったらどうなるだろうか……と考えてはじめたのが、この「絵画シリーズ」なんです。

あの名画がドット絵に!
あの名画がドット絵に!

──ははあ、こうして見ていくと、クリムトの「接吻」、ムンクの「叫び」、フェルメールなんかもある。これはロートレックかな。粗いドット、少ない色数でもちゃんとそれらしく見えるもんですね。

小野 そこがドット絵のおもしろいところでね。さすがにすべての絵画を『マッピー』のときの16 色パレットで描くのは無理があるから、別の色を使ってもいいということにして、ただし絵1点につき8 色以内というルールを自分で決めた。大きさも基本はタテヨコ16×16 ドットなんだけど、まあ、元となる絵画の大きさや比率の影響で、そこから外れているのもありますけどね。

──これはおもしろいです。見ていて飽きない。実は私も以前、『どうぶつの森』の「マイデザイン」という機能(32×32 ドットで絵が描ける)で、ロックの名盤レコードジャケットを再現したことあるんですけど、周囲に大好評でした。

小野 そう、みんなが見てわかるものを題材にするのがポイントですね。そのジャケットの絵、見てみたいですね。

──これなんかウォーホルの『キャンベルのスープ缶』だってすぐわかりますもんね。

小野 それはね、『メトロクロス』の缶をベースにしたんだ。

──あの蹴っ飛ばされてるやつ!(笑)

■ドット絵の需要はまだある!

──しかし、この「絵画シリーズ」をただ趣味で作ってるだけじゃ、もったいないですね。どこかで発表されたりしないんですか?

小野 実は去年の3 月に「Pixel Art Park(ピクセル・アート・パーク)」っていうドット絵だけの展示会がありまして、たまたま知って見に行ったんですよ。そのときは7 人くらいのメンバーがこぢんまりと展示していて。それで名乗ったんですね。ぼくはナムコでドット絵を描いてた者ですと。そうしたら「ざわ……」となって。

──なりますよ、そりゃ!(笑)

小野 そうしたら10 月に第2 回があるからと誘っていただけて、この「絵画シリーズ」を出展したんですね。

──あ、もう展示されてましたか。

小野 外神田にある3331 Arts Chiyoda というギャラリーでやったんですが、そのときは入場規制がかかるほどお客さんが来てくれました。「うわあ、ドット絵って人気あるじゃん」って。

──いまはゲームのグラフィックもずいぶんきれいになったし、容量だって昔とは比べ物にならないほどです。それでも、あえて8bit 風のドット絵で描く、みたいな流れは来てますよね。昔を知らない若い人も、自然にドット絵を楽しんでいたりして。

小野 ぼくが会社にいたときは、だんだんとドット絵への需要や評価が低くなってきて。それで悔しい思いをして、会社を辞めたんですから。

第5回へ続く

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