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ファミ熱!! ゲームの匠

ドット絵の匠・
インタビューシリーズ❶

小野“Mr.ドットマン”浩 編

第3回:ナスカの地上絵は大森にもあった

※取材・文:とみさわ昭仁 ※撮影:市村岬 ※協力:ナツゲーミュージアム
小野さん写真

■16 色くらいがちょうどいい

──テレビゲームで絵を描く場合、なんでも自由に描けるわけではありませんよね。

小野 そう、いまはたくさん色が使えるようになりましたし、たとえば小さなキャラにとてもたくさんの色を使っていたりするんですが、あれってホントに意味あるの? とは思います。色っていうのは、使えば使うほど逆に汚くなってしまうものだと思うんですよ。

──なんとなくわかります。

小野 いつも言うんですけど、赤い丸を描いて、白い点でハイライトをポンと打てば球に見えちゃうんですね。『パックマン』のチェリーとかもそうやって描いてる。で、そこにもう1 色加えるとしたら、せいぜいハイライトの反対側に暗い色で影をピッと描く程度。それでちゃんと球に見えるわけです。いまはたくさん色数も使えるようになっていて、それはそれで素晴らしい進化だと思うんですが、かといって、あんまり行き過ぎると、なんだかゲームっぽくなくなってしまうような気がしています。

──それはやはり小野さんが、ゲームの開発環境が貧弱だった時代に、様々な工夫を凝らしながら仕事をしてこられたからこそ感じることではないでしょうか。

小野 それはゲームデザインの部分でも同じだし、RPG なんかでキャラクターに長々とセリフを言わせられればいいのかというと、そうとばかりも言えない。少ない文字数で、たどたどしく表示されるセリフだからこその味というのもあるわけで。文字フォントなんかも普通にテレビのテロップを見るようなきれいな文字が出ても、それはなんか違うんじゃない? みたいなね。

──いかにもMr.ドットマンというご意見です。では、そうした制約が大きかった時代のゲーム・グラフィックのお仕事で、何か印象深かったことはありますか?

小野 最初は1 色ベタだったので、輪郭というかフォルムで勝負する、みたいなところがありました。それが『ギャラクシアン』あたりからは3 色+透明が使えるようになってきて、その次は『ゼビウス』あたりで8 色になったのかな?

『ギャラクシアン』の画面
『ギャラクシアン』の画面は4色で表現されている。
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

8色で表現された『ゼビウス』の画面
8色で表現された『ゼビウス』の画面。
ゲームセンターの中でも突出して美しい画面だった。
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小野 そうしたら、それなりに表現できることも増えて、それはとてもいいことなんだけど、でも、3 色の頃だっていま振り返ってみればおもしろかった。

──はい。

小野 たとえば、昔のゲームって背景が黒だったじゃないですか。そうすると、キャラクターのドットの一部を透明で抜けば、そこは黒い色として使えるわけです。

──すると3 色が4 色になる。

小野 その増えた黒をどこに使うか、っていう部分に様々な工夫の余地が生まれる。『ボスコニアン』の宇宙基地なんかは窓を黒で抜いてあるから、よく見てると背景に流れる1 ドットの星がシュッと通過したりすることがある。

──へえ〜。とてもそんなところをよそ見していられるゲームじゃないですが(笑)。

『ボスコニアン』の宇宙基地の窓の黒
『ボスコニアン』の宇宙基地の窓の黒は、背景の黒で表現されていた。
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

小野 そんな感じで、黒の使い方は上手くいったかなって思うんですけども。そうだなあ、ぼくは8 色くらい……多くても16 色くらいまでがちょうどいいと思ってるんですよ。しばらくはそんな感じでやってきて、携帯コンテンツの部署に移ったときは256 色くらいまで使えるようになって。もっとも携帯も最初は1色ベタでしたけど。

──あら、一気に増えました。

小野 でも、こんなに色数があっても無駄に使っちゃうよなあ、なんて思ってましたね。使えるのはいいんですけど、使えるとなったらぼくでも使っちゃいそうな気がする。例えば木がいっぱい生えていて、こっちの木とあっちの木は同じ茶色でいいのに、微妙に変えたりとかしちゃうんですよ。

──できるけど、それをしない、したくないっていう心理は何でしょうかね。

小野 うーん、昔ながらのおっさんだからそういうふうに思うのかもしれないです。

■マップの上に乗って描く

──エレメカを担当されていた時代に、立体物の造形は苦手だとおっしゃいましたが、ドット絵を描く際に、ある程度は立体感も意識なさいますよね?

小野 うーん、たとえば『ゼビウス』のソルバルウだったら、翼がヒョイっと垂直に立った部分があって、その影がどこまで落ちてるのか、どの辺まで色を濃くすればいいのか、そういうことは考えながらやってますよね。ただ、ぼくは『ゼビウス』ではソルバルウと、あとはマップを描く作業をした程度ですから、立体感はそれほど意識していなかったと思います。

『ゼビウス』の自機ソルバルウのドット
『ゼビウス』の自機ソルバルウのドット。機体におちる影も描かれている。
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

──『ゼビウス』はマップも素晴らしかったです。

小野 あれはタテ何画面×ヨコ何画面かで描いた1 枚のマップを、細切りにして繋いでるじゃないですか。A3 の方眼紙がだいたい1 画面分くらいあって、その余白部分をのりしろにして貼り合わせてデカイものを作って、その上に乗っかって描いてたんですよ。

──魔法のじゅうたんみたいですね。

小野 そう。3 畳くらいの大きさはあったんじゃないかな。いま思えば何をバカなことやってたんだって話ですよね。あの頃だってコピー機はあったんだから、ちょっと縮小すればよかったんですよ。それから、マップの絵っていうのはベタの一枚絵じゃなくて、いくつかのユニットを作って、それを組み合わせて描いてくんです。

──データ量を節約するためのテクニックですよね。

小野 そう。どこまで節約するかにもよりますが、『ゼビウス』の頃はまだひとつのゲームにそれほど大きな容量は使えなかったから、けっこう粗い絵のユニットになっていて、地形の絵としてみるとガタガタしているところが出てくる。

──でも、それがまた味わいなんですよね。それに、あの時代はゲーム全体がそういうもんでしたから、誰も「絵がガタガタで汚い!」なんて思いませんでしたよ。

小野 そうですよね。

──さて、これはぜひご本人の口からお聞きしたかったんですけど、『ゼビウス』のマップには私の大好きなエピソードがありまして。

小野 アレですか(笑)。

──アレです。ナスカの地上絵です。

『ゼビウス』に登場する、ナスカの地上絵
『ゼビウス』に登場する、ナスカの地上絵
ⒸBANDAI NAMCO Entertainment Inc.

■大森にあったレコード屋さん

──ゲームをスタートしてしばらく飛行していくと、やがて砂漠のところにナスカの地上絵が見えてきます。初めてあれを見たときは衝撃的でした。

小野 あれは砂漠の部分がポッカリ空いていて、茶色1 色では間が抜けてるし、何か入れたいなと。それで、当時は開発室が大田区の大森にあったんですけど、昼休みに駅前のレコード屋さんで買い物をしたらレコードを入れてくれた袋にナスカの地上絵が描いてあったんですね。それを見て、これを砂漠に描いたらいいんじゃないかと思いついた。

──そうそう、その話! 私はレコードマニアでもあるもんですから、そのお店のことが気になって仕方ないんです! なんていう名前のレコード屋さんか、覚えていませんか?

小野 さすがに覚えてないなあ。店はとっくの昔になくなっちゃってるし。ぼくも知りたくて、ついこの前、Google マップのストリートビューでだいたいの場所を通って見たんですけど、よくわからなかった。

──私の知り合いにもレコードマニアが多いので、この記事を読んだ誰かが教えてくれるかもしれませんね。……って、こんな話がこのインタビューに必要なのかは疑問ですが(笑)。

小野 いやいや、ぼくだってあの店の場所がわかれば跡地に行ってみたいですよ。行って記念写真を撮りたい!

──いいですねえ。場所が判明したら一緒に行きましょう。まあ、それはともかくとして、『ゼビウス』で描かれたのは地上絵の中でもとくに有名な「コンドル」と呼ばれている図案でした。

小野 あれって、現物はキレイに左右対称になってるわけじゃないんですよね。だから、それをそのまま再現するわけにいかないので、ユニットである程度は簡略化して、なるべく水平と斜め45 度の線が多くなるように描いていきました。

──尻尾はイヤな角度をしてますよね。

小野 そう! 扇状に広がってるから、少しずつ角度が変わってきてね。でも、あの感じを出すには多少無理をしてでも描くより他ないんだ。

第4回へ続く

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