ファミ熱!!プロジェクト

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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第27回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第107巻収録
「CDモンスター!!の巻」

 1997年の7月。プレイステーション用に画期的なゲームソフトが発売された。『モンスターファーム』(テクモ)である。

 プレイヤーはモンスターのブリーダーとなり、自分が入手したモンスターを飼育する。飼育といっても、ただ育てるのではない。仕事を与えたり、トレーニングをさせたりして、より強いモンスターへと鍛え上げていくのだ。強くなったモンスターは、バトル大会に挑戦させてもいいし、友人とモンスターを持ち寄って対戦させることもできる。

 このゲームを特徴づけている要素は2つある。「育成しての対戦」と「ゲーム外からの採取」だ。

「育成しての対戦」は、前年に発売された『ポケットモンスター』などの系統樹にも連なるもので、テレビゲームでは古くからある遊びの仕組みだ。それより、『モンスターファーム』が画期的だったのは、プレイヤーが入手するモンスターの“素材”を、ゲーム内ではなく「ゲーム外」に求めた点だ。

 モンスターの素材をゲーム外に求めるとは、どういうことか。それを順番に見ていこう。

■シーン1

 いつもの派出所。テレビの前に集まってゲームをしている両さん、中川、本田の3人。「先輩のモンスター死んじゃいましたよ」と中川が言う。画面を見てみると、たしかに墓標が立っている。名前は「かんきち」、年齢は2歳。どんなモンスターだったのかはわからないが、2年とはずいぶん短い寿命だ。

107巻/P26/4~6コマ目
107巻/P26/4~6コマ目

 本田も指摘しているように、両さんはモンスターの育て方が性急すぎるのだ。強くしてやろうと焦るあまりに、トレーニングばかりさせて休養を与えなければ、モンスターも参ってしまうよね。アメとムチ。たとえ厳しく接しても、その背後に愛情がなければ育つものも育たない。それはゲームも現実も同じだ。

 なーんてことを言っても、両さんは聞く耳を持たないのだろう。「また新しいモンスターを作ってやる!」とテレビに背を向けて何かを探している。そうして手にしたのは、パフィーのCD。このCDから新しいモンスターを生成しようというのだ。

 そう、3人が遊んでいるのは『モンスターファーム』だった。このゲームは、様々な音楽CD(他にプレイステーションソフトなども)を読み込ませることで、その商品データからモンスターを生成する。「モンスターの素材をゲーム外に求める」とは、そういう意味だ。

 ただし、どのCDが強いモンスターを生成するかは、読み込ませてみるまでわからない。貴重なCDだからといって数値が高くなるとは限らないし、イケメンなミュージシャンのCDがかっこいいモンスターを生み出すとも限らない。とにかく、いろいろなCDで試してみて、より優れたモンスターを探すこと自体が、このゲームの遊びの肝なのだ。

 パフィーのCD(コマに描かれたジャケットやCD盤面の絵を見ると、正確にはパフィーではなく「大貫亜美吉村由美」名義のアルバム『solosolo』のようだ)を読み込んでも、両さんが前回育てていたモンスター「ディノ」と同じものが生まれてきてしまった。これじゃあ話にならんとばかりに、両さんはディノを冬眠させて、別のCDを探す。

 そして麗子から借り出したのが、クラシックのCD。ジャケットには「モーツァルト」と書いてある。それがいいものなのかどうかを判断できない両さんは「うーむ」と唸っている。クラシックなど聴きもしない両さんが、なぜCDを欲しているのかわからない麗子は「何に使うの?」と素直な疑問を口にする。

107巻/P28/5~6コマ目
107巻/P28/5~6コマ目

 ここでもまた『モンスターファーム』の仕組みの説明が入る。聞いた話では、『こち亀』のこのエピソードのおかげで『モンスターファーム』はソフトどころか攻略本もずいぶん売り上げを伸ばしたらしい。たしかに、これを読んだら『モンスターファーム』で遊んでみたくなるよな!

 それから、両さんが例に出しているように、『モンスターファーム』は『バーコードバトラー』にも通ずる遊びの可能性を秘めている。あれもまた、ゲームの外にある「バーコード」という情報から「強さ」を抽出して戦うゲームだった。基本構造としては『モンスターファーム』も同類なのだ。

 そんなこんなで、麗子相手に『モンスターファーム』の遊び方をレクチャーしている両さんのところに、宅配便からの荷物が届く。

■シーン2

 荷物の送り主は、小学生ながらゲーム開発会社を経営する電極+(プラス)少年だ。包みの中には、ゲームのサンプルディスクとPHSが入っていた。タイミングよくPHSに電話がかかってきたので出てみると、送付したゲームのテストプレイをしてくれ、ということのようだった。ディスクには「モンスターメイド」と書いてある。これが、このゲームのタイトルなのだろう。

『モンスターメイド』は、両さんのセリフを借りて言うなら「『モンスターファーム』みたいなやつ」だ。話が早い。これをテストプレイして、5日後に返却せよ、というのである。ゲームのシステムもほぼ同じ。4人でバトルできるというので、両さんは中川たちも巻き込んでゲームを開始する。

 それぞれが手持ちのCDを読み込ませてみると、麗子のクラシックからは半裸のセクシーな女ファイターが、中川のジャズからはアーマーをまとったヒーロー風のキャラクターが、本田のロックからはパワーのありそうなモンスターが、それぞれ誕生した。

 両さんはアニメタル(意外な趣味!)を読み込ませる。しばらくして出現したのは、なんとも形容しがたいキャラクターだった。

107巻/P33/1~2コマ目
107巻/P33/1~2コマ目

 両さんが「ヘビメタッち」と名付けたキャラは、バトルに参加させてみると驚くほど弱い。それじゃイカンと厳しい特訓を課すのだが、ヘビメタッちはあっさり逃亡してしまう。それでも育成方針を改めるはずのない両さんは、もっと強そうなデータを持ったCDはないかと、探し始める。

 この『モンスターメイド』では、読み込むCDのミックスが可能という設定になっている。1枚のCDから1体のモンスターを生成するのではなく、複数枚のCDから読み込んだデータをミックスして、1体のモンスターを生成するというわけだ。この仕組みを活かして、いかにも両さんらしい発想で強いモンスターを作ろうと試みる。

 両さんが試してみたのは、ハードロックバンドのCDに水木一郎、佐々木功、子門真人といったアニソンの大御所たちをミックスするという大胆な方法だ。これなら、かなり強力なキャラクターが生まれるはず、と確信している両さんだが、出現したのは恐ろしくひ弱そうなやつだった。

107巻/P35/8コマ目
107巻/P35/8コマ目

 絵の具は全部混ぜるとグレーになる。モンスターのデータも、なんでもかんでも欲張って混ぜるとダメなのだろう。

■シーン3

 他に何かいいジャンルはないかと、必死に探す両さん。苦肉の策で試してみたのが演歌のCDである。演歌がお好きな方には申し訳ないが、演歌のCDからはあまり強いモンスターが生まれそうには思えない。ところが、読み取らせてみたら意外なことに強そうなキャラクターが生成された。試しに戦わせてみると、華麗な技を繰り出して圧勝してしまうのだ。

107巻/P38/3~4コマ目
107巻/P38/3~4コマ目

 どうやらキーワードは「演歌」だったらしい。考えてみれば、この『モンスターメイド』は小学生が開発している。演歌のことなど眼中にあるはずもない。つまり、演歌CDのデータはまったくの予想外で、バグをともなった不思議な裏技が出てしまうのだ!(と、両さんは解釈する)。ホントかなあ~。

 さらにパワーアップさせるため、鳥羽一郎と渥美二郎を合体させる。すると、先ほどのキャラクターは裸だった上半身に、かっこよさげなバトルスーツを装着した。技の種類も一挙に増える。実際、戦わせてみると無敵の強さを発揮した。狙い通りの結果が出て、調子に乗りまくる両さんである。

 その後、やれ落語のCDはどうだ、パソコンソフトのCD-ROMはどうだ、アダルト系のフォトCDはどうだと、いいネタ探しの実験はエスカレートしていく。

107巻/P41/1コマ目
107巻/P41/1コマ目

 このエスカレートぶりがおもしろいのは、いつもの『こち亀』でお馴染みの展開だからというだけではない。『モンスターファーム』にハマった人なら、みんな同じようなことをやった覚えがあるはず。自分が持ってるCDだけでは飽き足らず、両親や兄姉から借りたり、図書館でCDを借りてきたり、あらゆるものを試したことだろう。それは、まさしく宝探し気分だった。『モンスターファーム』は、その遊びをゲームの外にまで拡張したという一点において、永遠に語り継がれるゲームなのだ。

 ……と、キレイにまとめて終わろうと思ったら、この原稿を書いている2019年の末に『モンスターファーム』が復活していることを知った。スマホ版が11月に、NINTENDO SWITCH版が12月にリリースされた。すぐれた遊びの仕組みというのはある種の“発明”だから、新しいプラットフォームが出てくれば何度でも蘇るよね。

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第28回へ続く

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