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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第24回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第105巻収録
「超リアル釣りゲーム!!の巻」

 日本は周囲を海に囲まれ、山間部でも無数の川が流れ、古くから魚を身近に感じている国だ。産業としての漁業はもちろんのこと、レジャーとして魚釣りを楽しむ人口も多い。釣りがブームになったことは何度もあるが、最初にそのきっかけを作ったのは漫画の『釣りキチ三平』(1973年「少年マガジン」にて連載開始)ではないかと思う。

 1990年代に入ると、放流された外来魚のブラックバスを釣るバスフィッシングが流行する。これは漫画の影響というより、当時バス釣りが趣味であることを積極的にアピールした木村拓哉、反町隆史、糸井重里といった人気タレントや文化人の影響が大きいだろう。

 バス釣りブームを受けて描かれた漫画の代表的なものには、『グランダー武蔵』(1996年「コロコロコミック」にて連載)がある。「少年ジャンプ」ゆかりの作家では、『地獄先生ぬ~べ~』の真倉翔(原作)、岡野剛(作画)コンビによる『ツリッキーズピン太郎』『バスマスター モトキ』という作品も忘れてはいけない。

 ゲームにおいては、先述した糸井氏の監修で開発された『糸井重里のバス釣りNo.1』が有名だが、「竿を振る」「リールを巻く」といった釣り本来のギミックそのものを遊びに取り込んだ『バスマスターズ』(1997年/タカラ)は、釣りゲームの革命だったと言ってよいだろう。今回は、そんな『バスマスターズ』を題材にしたエピソードだ。

■シーン1

 職場というより遊び場同然の派出所で、両さんと本田が『バスマスターズ』で遊んでいる。「当たり(バイト)だ」「素早くあわせろ(フックアップ)!!」「糸の張り(ラインテンション)」「ドラグをゆるめて」などなど、いきなりバス釣り用語を連発して、この分野に疎い読者を置いてけぼりにする。

105巻/P146/2~3コマ目
105巻/P146/2~3コマ目

 そこに現れるのが中川と麗子。「なんですそれ?」「どうやるの?」といった彼らの疑問を受け、この『バスマスターズ』の仕組みはもちろん、最近は少年の釣りファンも増えて来て、ゲームもリアル志向になって来ていることなど、釣りを取り巻く状況をセリフで丁寧に説明してくれる。毎度お決まりのパターンではあるが、ホビーネタとしては完璧な導入部だ。

 ぼくは釣りにはあまり興味のない子供だったが、親父が磯釣りに熱心な人で、子供の頃にはよく同行させられた。夜明け前、始発電車に乗って木更津駅まで行き、そこからボートで防波堤に渡る。海上に突き出たコンクリのブロックだ。子連れでよくそんな危険なところに上がったもんだと思うが、そういう無謀な親父だったのだ。

 そこで釣り針にエサの青イソメ(検索すると気持ち悪い生き物が出てきます)を付け、沖に向かって思いっきり竿を振り出す。その後、浮きの動きを凝視するとか、糸をちょいちょいと合わせてみるとか、磯釣りにはそういうゲーム的な駆け引きはない。魚がエサに食いつくまで、ひたすらボーッと待つのだ。好きでやってる親父はいいけど、好きでもないのに連れてこられた子供は、まあ退屈だよね。それでも毎回くっついて来たのは、帰りの木更津駅で食べる立ち食いうどんが美味しかったから。

 虫が苦手なぼくにとって、釣りを趣味にできなかった最大の要因はエサだ。同じ理由で釣りを避けている人も少なくないだろう。そして、そんな人たちでも安心して釣りを楽しめるようになったのが、ルアーという疑似エサの出現だ。ルアーフィッシングが釣りの敷居を下げ、それがバス釣りブームにつながったという考え方はあながち間違いではないだろう。

105巻/P149/8コマ目
105巻/P149/8コマ目

 ルアーには、様々な形のものがある。バスが常食する小魚にそっくりな形態のものもあれば、なんだかよくわからない形のものもある。魚の眼は人間とは違うので、魚の眼に「美味しそう」に映りさえすればいいのだ。釣りをする環境と、水の状態、天候や季節、魚の種類によって、使用するべきルアーは変わる。それを見極めるのもまた釣りの楽しみで、『バスマスターズ』でもそういった楽しみは再現されているようだ。

 というわけで、バス釣りのことなど何も知らなかった麗子(と読者)がある程度の知識を得たところで、大原部長が登場する。

■シーン2

「何をしてるんだ」と尋ねる部長に、「釣りゲームです」と馬鹿っ正直に答える両さん。いつもなら「バカモーン!」とカミナリのひとつも落とされるところだが、釣りをたしなむ部長はどことなく興味深げだ。

105巻/P151/3~4コマ目
105巻/P151/3~4コマ目

 相手が部長だからか、ルアーデプス(水中における仕掛けの位置)やフッキング(魚が食いつくタイミングに合わせた竿の引き)など、『バスマスターズ』の説明はさらにディテールの細かいところに突入していく。両さんの説明にいちいち食いつく様子は、まるで部長自身が魚のようである。

 ひと通りの説明を受けたら、次は実際にプレイしてみる。バス釣りの経験はないと謙遜する部長だが、やはり釣竿の扱いには慣れているのだろう、最初のプレイで25ポンド越えの大物を釣り上げてしまう。「すごいファイトでしたね!」「初めてですごいわ部長さん」と、その釣果を讃える派出所の一同。なんだかやけに和やかな光景だ。

105巻/P153/5コマ目
105巻/P153/5コマ目

『こち亀』がこんな平和なままで終わるわけがない。案の定、両さんは調子に乗って「みんなでトーナメントしましょうよ」などと提案するが、すっかり『バスマスターズ』を気に入ってしまった部長はひとりで独占して、両さんを放り出す。

 せっかくの遊び道具を取られてしまった両さん。そこにやって来たのが……両さんのエロ友達の藤田である。

■シーン3

 その名も藤田尾出男(ふじたびでお)。いつも話題のエロビデオを入手しては、両さんのところへ持ってくるこの男。今回もまたいいビデオを手に入れたのかと思えば、さにあらず。その手にしているのは『バスマスターズ』だった。

 いや、どう見ても『バスマスターズ』なのだが、藤田は違うと言う。なんと、『バスマスターズ』の(おそらく違法改造版の)『ギャルマスターズ』なのだった。両さんでなくとも「何!」と叫んでしまうだろう。

105巻/P154/6~7コマ目
105巻/P154/6~7コマ目

『ギャルマスターズ』を簡単に説明すると、ようするに『バスマスターズ』のナンパ版だ。ボートの代わりにベンツやBMWに乗って街をクルージングし、シャネルやティファニーといったルアーで女の子を釣る。

 もちろんこんなゲームが実在するわけもなく、秋本先生の妄想ゲームなのだが、これは……メチャメチャやってみたい。両さんも「すげーおもしろそー」と目を輝かせているが、驚くべきことにこのゲーム、藤田は6万円も出して買って来たのだと言う。もうこの価格設定で、この後どんな展開が待ち受けているか予想がつくはず。

 そう、このゲーム「本物が釣れる」のである。

 基本の仕組みは『バスマスターズ』と変わらないが、本体にはデジタルカメラが内蔵してある。これで道行く女の子をこっそり撮影し、その顔とスタイルを記録する。……えーと、ほとんど犯罪的だけども、漫画の中の妄想ゲームなのでお許しいただきたい。

 そうやって気に入った女の子を『バスマスターズ』と同様に釣り上げたら、女の子の写真をプリクラのように印刷できる。釣り逃したらデータは消えてしまう。これは燃える!

 両さんは、試しに「レイコ」を釣ってみることにする(このときのセリフで麗子がカタカナ表記なのは、メバルやカサゴなどのように魚っぽく見せる演出だろう。芸が細かい!)。仕事中のレイコをカメラで隠し撮りして、データ化。するとレイコの美人度は100%だった。魚の位で表すと「マーリン」や「トレバリー」クラスに匹敵するほどだ。

105巻/P159/3~4コマ目
105巻/P159/3~4コマ目

 レイコは大物なだけあって、当たりもすごい。糸がどんどん流されていき、なかなか手元に引き寄せられない。両さんは必死に格闘するが、願い叶わず糸はプツンと切れてしまう……。

 で、ここでやめておけばいいものを、両さんは懲りることを知らない。このあと藤田と共に葛飾署に行って、署内の婦警さんたちを釣ろうとして大問題になるのだった……。

第25回へ続く

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