ファミ熱!!プロジェクト

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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第18回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第101巻収録
「コンビニゲームバトル!!の巻」

 いま、コンビニ業界が揺れている。大手チェーンのスマホ決済サービスがセキュリティ対応の甘さからシステム破綻してしまったり、フランチャイズオーナーが本部による過剰な出店競争の犠牲となったりするなど、残念なニュースばかりが流れてくる。

 本来コンビニというのは、人々の快適な生活を支えてくれる商業形態だったはずだ。それが、どうしてこんなことになってしまったのだろう?

 とはいえ、社会経済を論ずることが本コラムの目的ではないので、それ以上のことは深追いしない。ただ、今回紹介するエピソードは、そんなコンビニ業界の熾烈な戦いを風刺した内容となっている。

■シーン1

 アロハシャツに短パン、頭にはパナマ帽、片手にウクレレを携えた男が、スケボーに乗って派出所へ駆け込んでくる。そして「アローハ」とひと声。サングラスをしていても眉毛でわかる、両津勘吉だ。

 このとき、両さんはハワイでの挨拶となるハンドサインを示すが、それを見た中川や麗子にダメ出しを食らう。ハワイのものとは少しばかり指の曲げ方が違っていて、両さんのは『まことちゃん』の「グワシ」になっていると言うのだ。

101巻/P166/3~4コマ目
101巻/P166/3~4コマ目

 グワシ、わかりますかね? 楳図かずお先生の『まことちゃん』に出てくる決めポーズの一種で、グワシの他にサバラなんてのもあった。一方、両さんがやりたかったのはハワイで「シャカ・ブラー」や「ハング・ルーズ」と呼ばれているハンドサインで……って、これも本題とは関係ないので、これ以上深追いはしない。

 さて、今回登場するのはコンビニバトルゲームである。作中で明言されていないので正式なゲームタイトルはわからないが、対戦型のコンビニ経営シミュレーションだ。いま、派出所内でブームになっているとのことで、火を付けたのは両さんに違いないだろうが、中川や麗子はもちろん、たまたまやってきた大原部長も巻き込んで、みんなでプレイすることになる。

101巻/P168/4コマ目
101巻/P168/4コマ目

 おそらく各自のパソコンを寄せ集めたのだろう。4台のパソコンが電話回線を通じて接続されている。ブラウン管モニターのデスクトップ機と液晶ディスプレイのノートパソコンが混在しているあたり、この作品の描かれた時期がハードウェアの移り変わりの過渡期だったことを伺わせる。

■シーン2

 いざ、ゲームスタート。自己資金は500万円あるが、それだけではコンビニ経営はできない。そこで、まずは銀行から追加の融資を受けて、コンビニを開業する。月々の売り上げから借金を返していき、2年後の決算時にどれだけの資産を残せているか、それによって順位が決まるというわけだ。

 出店する際に大切なのは、土地選びだろう。コンビニという業種はどういう場所に出店するのがいいのか。最適な立地を見極める必要がある。各プレイヤーは慎重に土地を見定めて、ここぞという一ヶ所に決めるのだが、両さんにそんな常識は通用しない。

101巻/P170/5~6コマ目
101巻/P170/5~6コマ目

 さすがはボーナスをもらったその日に使い切る男。借金は限度額いっぱいまで借りるのが両さん流の生き方だ。

 とはいえ、事がゲームの攻略となると、俄然、鋭い考察力を発揮するのが両さんでもある。民家などない農地の真ん中に出店した大原部長をあざ笑う一方で、そこが交差点の手前の角であることを高く評価する。車というのは、交差点の向こう側にある店は通過しがちだが、交差点の手前の店は信号待ちで減速するため目につきやすいからだ。「ムチャクチャにやってる様に見えて、結構、計算しているな…」とは部長の弁。

 ゲーム前半、両さんのコンビニは調子よく売り上げを伸ばしていたが、ここでアクシデントが起こる。伸び悩んでいた部長にボーナスポイントが適用され、店の目の前に突如として地下鉄の駅ができたのだ。さらに、農地だったエリアが宅地造成されて大型マンションも続々建てられる。これによって部長の店は急激に売り上げを伸ばしていく。

 こうなっては両さんも黙ってはいられない。部長の店の斜向かいに新たな支店を建設する。

101巻/P175/2コマ目
101巻/P175/2コマ目

 これ、漫画の中だけのことではなく、日本全国どこでも実際に行われていることだ。ぼくの自宅近所でも同様のことがあった。交差点の角にマイナーなコンビニがあって、長いこと地域住民の生活を支えていたが、あるときその斜め向かいに某大手チェーンの支店が作られた。こりゃ完全に大資本が個人商店を潰しに来たなと思ったが、案の定、1年も経たずに先住のマイナーコンビニは閉店してしまった。それが資本主義社会のルールとはいえ、残酷なことをするものだ。

■シーン3

 その後も、調子に乗った両さんは部長の店をいたぶり続け、しまいには5軒の店で部長のコンビニを囲んでしまうという暴挙に出る。これじゃお手上げだ。さすがに見かねた中川は、ここで助け舟を出す。部長の店のまわりの土地を買い占めて、両さんが出店できないようにしたのだ。

 悔しがる両さんは、ここで「旅行に行ってやる」などと言い出す。ゲーム中に何を呑気なことを言ってるのかと思えば、マカオのカジノで一発逆転を狙うというのである。

 コンビニ経営をほったらかしにして、ゲーム内ゲームのギャンブルに熱中する両さん。普通の漫画なら、ここで全財産をすって一文無しというオチが待っているところだが、なんとスロットマシーンで1億円を稼いでしまった。これなら借金もすべて返せるだろう。

101巻/P178/7コマ目
101巻/P178/7コマ目

 寺井の忠告をガン無視する両さんのセリフに笑ってしまう。それでこそ両津だ。

 その後も、無茶な投資とギャンブルの両輪で順調に資産を増やしていき、一時期は1,000億円まで資産を増やした。しかし、終わりの日は唐突にやってくる。

 見知らぬゲーマーが、電話回線を通じてコンタクトをとってきた。こちらのプレイ状況を見て、両津に対戦を申し込んできたのだ。喧嘩上等とばかりに対戦を承諾した両さんだったが、相手は資産9,000億円の化け物だった。名前を問えばイニシャル「K.R」。そう、謎のゲーマーはこのゲームを作った本人であり、佃島でゲーム会社を経営する両津勘兵衛なのだった。

第19回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

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