ファミ熱!!プロジェクト

MENU

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第15回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第99巻収録
「C・Gカタ屋!! の巻」前編

『こち亀』というマンガを特徴付ける要素のひとつに、「懐かしさ」と「最新テクノロジー」を混ぜ合わせる、という切り口がある。今回取り上げるエピソードは、まさしくその手法を活用したもので、昭和30年代から40年代にかけて存在した子供向けの遊びである「カタ屋」と、現代の遊びである「コンピュータゲーム」をハイブリッドさせている。

 ここでいきなり「カタ屋」と言われても、その時代に生まれていない人には何のことだかわからないだろう。どういうものかはあとで説明するので、まずはエピソードの順を追って見ていこう。

■シーン1

 場所は左近寺の住む部屋。前回の記事では「左近寺のマンション」と書いてしまったが、警察の後輩たちが大勢いるし、このあとの展開で両さんがすぐに自分の部屋に案内することから、ここは警察の寮だったようだ(研究不足で失礼しました)。

 あいかわらずゲーム好きの左近寺は、後輩たちを集めて格闘ゲームに熱中している。しかしこの左近寺、ゲームになると我を忘れるところがあるのは、すでにご存知の通り。案の定、ゲームに夢中になるあまりコントローラーを持った腕を振り回し、蹴りを繰り出し、対戦相手はおろか周囲のギャラリーまでノックダウンさせてしまう始末。

99巻/P67/1〜2コマ目
99巻/P67/1〜2コマ目

 ところが、当の本人である左近寺は自分が暴れた自覚をもっておらず、「バトル中、寝るとは失礼だぞ!」などと言っている。彼は格闘ゲームをやると人格が変わってしまうのだ。後輩からそう指摘されて一旦は冷静になるものの、やはりプレイが始まると同じことの繰り返しである。

 そんな騒ぎを聞きつけて、やって来たのが両さんだ。左近寺はゲームをしながら腕や足をブンブン振り回しているので、容易には近づけない。そんな彼の扱いに慣れている両さんは、冷静にゲーム機の電源を落とす。我に返った左近寺は「俺は一体何を!?」などと記憶喪失者のようなことを言う。

 両さんは秋葉原までゲームを買いに行っていたのだと言うが、このときの左近寺のセリフがいい。

99巻/P71/4コマ目
99巻/P71/4コマ目

 左近寺、顔は怖いがカワイイ奴だ。両さんのことが大好きなのがそこはかととなく伝わってくるではないか。で、両さんから「一息入れてわしのゲームにつき合えよ」と、誘われるままに両さんの部屋へついていくのだった。

■シーン2

 秋葉原で買ってきたと言って、両さんが袋から取り出すのが『The カタ屋』というゲームである。

99巻/P72/5〜6コマ目
99巻/P72/5〜6コマ目

 お待たせしました、ここで「カタ屋」についてご説明しましょう。

 カタ屋というのは、前述したように昭和30年代から40年代にかけて子供たちの間で流行した遊びの一種で、紙芝居などと同様、夕方になると通学路に出没する。紙芝居は見物するだけの受け身な娯楽だが、カタ屋は子供たちが積極的に参加する能動性を備えている。筆者のぼくも、昭和36年生まれの東京下町育ちなので、カタ屋にハマってよく小遣いを巻き上げられたっけ。

 カタ屋のルールは簡単。まずは、カタ屋のおやじが用意して来た動物やマンガのキャラクターが彫り込まれた素焼きのカタ(型)を買う。カタには色々なサイズがあって、小さいものは10円くらい、大きなものになると4000〜5000円もしたが、そんな高額なものを小学生が買えるはずもない。

99巻/P73/1〜2コマ目
99巻/P73/1〜2コマ目

 子供たちは、カタ屋から粘土を買って自分の所有するカタに詰め、半立体のキャラクターを抜き出す。できたものに金、銀、赤、緑といったカラーの金粉をまぶして着色すれば完成だ。もちろん、これらの金粉もタダではない。そして、出来上がった作品をカタ屋のおやじが品評し、出来栄えに応じた点数券がもらえる。この点数を貯めることで、高額なカタとも交換できるという仕組みだ。

 というわけで、現在ならほぼ50歳より上の人でなければ覚えていないような遊びであるカタ屋をコンピュータゲーム化したのが、両さんの買ってきた『The カタ屋』なのだった。

 電源を入れると、CGを駆使した凝りまくりのオープニングに続いて、3Dポリゴンで描画されたカタ屋のオヤジが登場する。

99巻/P74/1〜2コマ目
99巻/P74/1〜2コマ目

 ゲーム中に登場するカタ屋のおやじは一人だけじゃない。アメリカ、中国、インド、ジャマイカなど、各国のカタ屋を選ぶことができるようになっている。たいていのことには驚かない両さんだが、このソフトは、どうせカタ屋をゲームにしただけのチープなものと、見くびっていたのだろう。ところが、あまりの技術の無駄遣いっぷりに驚かされている。たしかに、ここまでされたら感心するしかないね。

■シーン3

 ともかく、両さんたちはプレイを進めていく。まずはカタを購入。最初は30円の(有名ロボットマンガによく似た)ロボットの顔型だ。これに粘土を押し付けてカタをとる。それが済んだら着色に取り掛かる。画面の左側にはフォトショップ風のツールパレットが表示されている。ハイテクなんだかローテクなんだかよくわからない光景だ。

99巻/P75/1〜2コマ目
99巻/P75/1〜2コマ目

 現実のカタ屋では、金粉を指でつまんで粘土に振りかけるなどして着色していたが、『The カタ屋』ではポリゴン表示された粘土をグリグリ回転させて、立体的な着色が可能になっている。このあたりも無駄にすごい。こんなゲーム実在しないのはわかっているが、読み進めるほどにこのゲームを遊びたくなっている自分に気づく。

 さあ、作品ができたらおやじに見せよう。拡大、縮小、様々な角度から鑑定され、出てきた結果は……1,000点。これが高いのか低いのかはよくわからないが、両さんは「査定が厳しい」と不満げだ。いずれにせよ、こうして点数を貯めていき、より豪華なカタを手に入れていくのは、現実のカタ屋と同じ仕組みのようだ。

 両さんと左近寺はコツコツとプレイを続け、けっこうな点数を集めることができた。そろそろ新しいカタに交換してもらおうと、おやじのいた空き地へ行ってみるのだが……。

99巻/P76/4コマ目
99巻/P76/4コマ目

 おやじが消えていた。

 そう、現実でもそうだったのだが、カタ屋というのはある日突然、ぼくらの町にやってきて、ある日突然消えるものだったのだ。

 子供たちはカタ屋に群がって、安いカタや粘土や金粉を買い漁る。できた作品は、だいたいいつも不当な低評価で採点されるが、文句を言ってもどうにもならない。そんな理不尽さに耐えながらも、手先の器用な子が着実に点数を貯めていく。そうして、そろそろ豪華なカタに交換できそうだなというタイミングで、パタッとおやじは来なくなる。あとには、何の金銭的価値もない点数券だけが残されるのだった。

 そんなビジネスモデルまで忠実に再現された『The カタ屋』だが、これを黙って見過ごす両さんではない。この後どういう展開を迎えるかは……7月19日更新予定の後編に続く!

第16回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

トップへ戻る