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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第14回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第99巻収録
「格闘ゲーマー警官登場!!の巻」

 今回取り上げるのは、コミックス99巻に収録の「格闘ゲーマー警官登場!!の巻」。これもまた恋愛シミュレーション・ネタである。

 まず最初に登場するのは、葛飾署に勤務する左近寺竜之介(さこんじ・たつのすけ)。このエピソードが初登場となる新キャラだ。柔道の達人で、格闘技や格闘ゲームの鬼とも呼ばれている。「全国警察柔道大会 警視庁代表選手権大会」では、見事一本を決めて代表に選出される。

 続いて登場するのは、我らが両津勘吉。両さんもまた背負い投げを一気に決めて代表に選出される。ギャラリーのセリフによれば、毎年この二人が代表選手として残るらしい。それほど圧倒的な強さを誇る二人なのだ。

 署長をはじめ、同僚の警官たちからも祝福される左近寺と両津。婦警さんたちは強く逞しい左近寺に花束を贈るが、硬派一徹な彼は女性たちの声援には目もくれず、両さんに「今日もやろうぜ」と何かに誘う。両さんもすぐに「OK!」と応えるが、さて、この二人。いったい何をやるというのか……。

■シーン1

 場所は左近寺のマンション。こんなところで男二人が奇声をあげながら汗を流すことといえば……ゲームである。

99巻/P10/5〜6コマ目
99巻/P10/5〜6コマ目

「怒神東拳(いかりしんとうけん)」は『マツコ&有吉の怒り新党』、「範聖拳(はんせいけん)」は『有吉反省会』。どちらも有吉弘行の冠番組を連想させるではないか。もちろん、このエピソードが『少年ジャンプ』に掲載された時期を考えれば、この類似はまったくの偶然だとわかる。コマの隅々にまでいろんなネタや言葉遊びが盛り込まれている『こち亀』だからこそ、こんな偶然も起こってしまうのだ。

 本題に戻ろう。左近寺は迫力のコントローラさばきで両さんを打ち負かし、勝利をもぎ取る。ここで、左近寺のゲーム部屋の全景が描写される。 

99巻/P12/1コマ目
99巻/P12/1コマ目

 窓際にかけられた柔道着。おそらく柔道大会で得たものだろうトロフィーや表彰状の数々。しかし、それら肉体の汗を伴ったアイテムよりも目に付くのは、床に散乱したゲーム機の数々だ。丁寧に描かれたフォルムから、ファミコン、スーパーファミコン、PCエンジン、CD-ROM2、PC-FX、プレイステーション、セガサターン、3DO REALといったゲーム機が見てとれる。この左近寺という男、かなりのゲーマーである。

 両さんと左近寺はゲーム友達。しかも、左近寺は格闘技に人生を捧げるほどの男だから、二人がプレイするのは格闘ゲームばかりのようだ。両さんが持参したトランクの中には格闘ゲームがたくさん詰まっている。

 ゲームソフトの他にも、両さんはゲームの裏技を収録したビデオカセットをいくつか持ってきている。画面をビデオに録り、コマ送りで見返せば技を繰り出すタイミングなどがよくわかると言うのだ。また、大学ノートには最短時間での相手の倒し方なども記録されている。本当に職務以外のことには研究熱心な両さんだ。

 ここで唐突に「竜之介君!」と女の子の声が聞こえてくる。瞬間的に顔を赤らめ、周囲を見まわす左近寺。無理もない。「竜之介」というのは左近寺の名前だ。いったいどこに女の子がいるのか。なぜ左近寺のことを呼びかけているのか。どうやら、格闘ゲームの攻略ビデオを見ようとした両さんが、うっかり間違えて本田(恋愛シミュレーション大好き)にあげるつもりのビデオテープを再生してしまったようだ。

 そのソフトは『どきどきメモリアル』といって、恋愛シミュレーションだ。カタブツの左近寺も、そういうジャンルのゲームがあることは、ゲーム雑誌で見たことがあると言う。両さん曰く、この『どきメモ』は入力したプレイヤーの名前を、音声合成で呼んでくれるのが特徴だという。両さんとしては誰の名前でもよかったのだが、なんとなく左近寺の名前が浮かんだので、それを登録しておいたということだ。

 さりげない風を装って、いろいろと『どきメモ』のことを聞き出そうとする左近寺。そろそろ帰らなければならないと言う両さんに、そのゲームソフトを貸してくれと懇願する。格闘ゲーム一筋、硬派なはずの人物がなぜ? 左近寺は「弟がやりたがっていた」などと言う。顔じゅうから冷や汗を滴らせながら……。

■シーン2

 引き続き左近寺のマンション。両さんはすでに去った。窓のカーテンを閉め、誰にも覗かれることのない態勢を作って、左近寺はおもむろにテレビモニターと向かい合う。起動しているソフトはもちろん『どきどきメモリアル』。

 キャラクターメイキングでは「左近寺竜之介」とフルネームを入力する。あだ名は「竜(たっ)ちゃん」。このゲームは女の子との仲が進展すると、あらかじめ指定しておいたあだ名で呼んでくれるようになるのだ。軟派なゲームになど興味なかったはずの左近寺が、やけに真剣に取り組んでいる。

 ゲームをスタートすると、早速、廊下の向こうからヒロインがやってくる。本田に輪をかけて女の子には免疫のない左近寺だ。「お早よう竜之介君!」などと呼ばれるだけで、感激のあまりめまいを起こしてしまう。

 前回、本田がプレイしていた『キャンパス フェアリー』はデートに誘うのもひと苦労だったが、こちらの『どきメモ』はそのあたりはハードルが低いようだ。不器用な左近寺がいきなりデートに誘っても、彼女はあっさりOKしてくれる。

99巻/P18/3〜4コマ目
99巻/P18/3〜4コマ目

 拳を突き上げ、全身で喜びを表現する左近寺。彼は、格闘技で難しい技に挑戦するのも、女の子を攻略するのも、同じ熱量で取り組んでいるようだ。

 ともかく、最初の関門を突破した左近寺はデートの準備を進める。彼女がデートに着ていく服を選んでいるのを見て、自分も服を選ぶ。やはりデートをするなら男だって服装に気を使うべきだ。そこで彼が選んだのは、紫のジャージの上下にサンダル。デートにふさわしくない服オブ・ザ・イヤーがあったらぶっちぎりで優勝しそうな組み合わせである。

■シーン3

 数日後。ふたたび両さんが左近時のアパートを訪ねてくる。前に来たときとはうって変わって、部屋の中はすっかり片付けられている。隅に積まれた雑誌は、メンズ・ファッション誌や流行りのデートスポットを紹介した雑誌など。「お前、最近見る本が変わったな」と、両さんも戸惑い気味だ。

99巻/P19/5コマ目
99巻/P19/5コマ目

 読書傾向が変わったことは、そのまま左近寺の着ている服に反映されている。部屋に散らばるアイテムも、ゲーム機がミニコンポに、鉄アレイがスノーボードに変わり、すっかりお洒落ボーイの部屋へと変貌している。

 すでにおわかりのことと思うが、硬派だった左近寺は恋愛シミュレーションにずっぽりハマったことで、生活習慣が180度変わってしまっていたのだ。これが白バイ隊員の本田なら、ハンドルを握っていないときは軟弱な状態だから、恋愛ゲームに夢中になっていてもそのギャップは小さい。ところが、左近寺という常に硬派なキャラクターを登場させたことで、そのギャップは倍増することになったわけだ。

 では、このまま硬派と軟派のギャップというおもしろさだけでエピソードが進んでいくのかというと、ここから先はさらに意外な展開を見せる。左近寺は市販の恋愛シミュレーションをプレイするだけでは飽き足らず、同人ゲームの即売会にまで足を運ぶようになり、そこで禁断のゲームを買ってしまうのだ。

 その『アンジュリア』というゲームは、やはり恋愛シミュレーションではあるが、愛したはずの美女は実は男だったという設定。これにハマるとえらいことになるだろう。そのことを知った両さんは「今すぐ止めに行こう」と左近寺の部屋へ向かう。だが、そこには変わり果てた左近寺の姿があるのだった……。

第15回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

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