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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第12回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第97巻収録
「R・P(ロール・プレイング)パチンコ!?の巻」

 この連載の第2回目でも少し触れたが、ぼくが通っていた高校の不良少年たちも『スペースインベーダー』が登場したときは、この新しい遊びに夢中になった。ところが、しばらくすると彼らはゲームセンターに行くのをやめ、また以前のようにパチンコ屋へ戻っていってしまった。それはなぜか?

 彼ら曰く「ゲームは儲からないから」だという。

 たしかに、テレビゲームはおもしろいけれど、遊べば遊ぶほどお金が出ていく。ところが、パチンコはうまくすれば投じたお金が何倍かになって戻ってくる。もちろん、必ず儲かるわけではないし、むしろ損をすることの方が多いと思うのだが、それでも人は大当たりを夢見てパチンコ屋へ向かう。ギャンブルとはそういうものだ。

 インベーダーブームで瞬間的に人々はテレビゲームに飛びついたが、やがて、大半の人はゲームから離れていった。あとには熱心なゲーム好きだけが残された。そういう人たちが黎明期のゲーム市場を支え、また、ゲームの作り手にもなっていった。

 さて、両さんである。彼もまた、第2回で取り上げた「さぼりゲームの巻」で中川が発言していたように、パチンコを卒業してテレビゲームに趣味を切り替えた人間のひとりだが、その後のエピソード──たとえば「全日本パチプロ大会!の巻」(31巻収録)や、「芸人!?ワニ公!の巻」(67巻収録)などを読めばわかるように、パチンコとは縁を切れていないことがわかる。

 というわけで、今回取り上げる「R・P(ロール・プレイング)パチンコ!?の巻」は、ゲームも好きだが、パチンコも相変わらず大好きな両さんにとって、夢のようなソフトが登場する。

■シーン1

 警らから大急ぎで帰ってきたのであろう、自転車のハンドルを握ったままの両さんが、「おお、やっと来たか!」という喜びの声と共に派出所へ駆け込んでくる。中川が「さっき宅配の人が届けてくれました」と言うように、両さん宛ての荷物が届いたようだ。いそいそと包みを開けてみれば、出てきたのは1枚のゲームソフト。

97巻/P6/3コマ目
97巻/P6/3コマ目

 次のコマで両さんがディスクをセットしているのは、プレイステーション(のように見えるゲーム機)だ。実際の派出所にゲーム機があるかどうかはわからないが、亀有公園前派出所になら、あってもおかしくはない。

 両さんは、警察官の制服を着たままパチンコしているところを部長に見つかって以来、パチンコ屋への出入りを禁じられているのだという。そんな両さんにとって、家庭用ゲーム機で遊べるパチンコゲームは、最高のアイテムなのだ。

 しかし、実際の玉を弾くわけではないデジタル映像のパチンコなど楽しいのだろうか? という誰もが抱く疑問を中川も感じている。だが、両さんは「近頃のは本物と変わらん」と断言する。ゲーム機の性能が上がったことで、玉の動きは物理計算でとてもリアルに再現できるようになった。ソフトのパッケージにも、よく見ると「超10(10乗)リアル」と書かれている。

 そして、このソフト。通販のみで店頭販売はされておらず、価格は驚きの3万円だという。

 ゲームソフトは、最初にファミコンが登場したときは1本3千円から5千円くらいのものだったが、ROMの大容量化や開発費の高騰が定価にも反映され、1万円を超えるようになっていった。それでも、上限は15,000円程度だったはず。それに比べると、今回、両さんが購入した『SUPER 超10リアル パチンコ』は異常に高い。そこには何か秘密がありそうだ。

 とにかく、ゲームをスタートさせる両さん。まずは店を選び、さらにパチンコ台を選ぶ。このソフトは実際のパチンコと同じように、釘の状態を3D画像で見ることもできる。何台かチェックするなかで、ようやく釘の並びがいい台を見つけた両さんだが、プレイするにはカードが必要だと気づく。自販機でカードを購入して、先ほどの台に戻ってみると……。

97巻/P8/4〜6コマ目
97巻/P8/4〜6コマ目

 席を空けていた隙に台を取られてしまった。「ここは私の席ですが……」と丁寧に声をかけるが、「やかましい!」と殴られる両さん(のプレイヤーキャラ)。それでも、なんとかいい台を見つけ、打ち続けるあいだに何度目かのスリーセブンを引き当てる。かれこれ1万発は出したことになるだろうか。ゲーム以上にギャンブルの才能もある両さんだから、当然の結果と言えなくもない。

 ところが、ここで操作中のキャラクターに異変が起こる。急に尿意を催してしまうのだ。玉を取られないようライターを置き、トイレに駆け込む。(小)かと思ったら(大)だったので、けっこう時間を消費する。やっと用を足して席に戻ると玉がない。誰かに盗られたようだ。

 隣の客に話しかける。「隣の台の玉 盗ったのは誰ですか?」とメッセージウインドウが表示される。「邪魔するな」と殴られる。どうやらセリフの選択を間違えたようだ。もはやパチンコゲームをやってるのか、RPGをやっているのかわからなくなってきた。そういえば、このエピソード、タイトルが「ロール・プレイング・パチンコ」だったね。

■シーン2

 またイチから出直しだ、ということでパチンコを再開する。ここで玉の動きを見ながら両さんと中川の交わす会話がとても興味深い。

「玉の動きがリアルですね」と感心する中川に、両さんは「本物のパチンコもテレビ画面にすればいいんだよ!」と言い放つ。玉の動きも、釘に当たる音も、本物並みにシミュレートできるなら、実際のパチンコ台もデジタル画像にしてしまえばいいというわけだ。

97巻/P10/8コマ目
97巻/P10/8コマ目

 このコマでの両さんの指摘は、非常に鋭い。ぼくはパチンコをやらないが、お腹がくだりやすいので、よくパチンコ屋さんでトイレをお借りする。そのついでに並んでいる台を観察したりするのだが、スリーセブンなどの役物は液晶モニターでデジタル化しているのに、玉はまだ実物を弾いている。

 中川の言う通り「技術的には可能」なはずだけど、なぜ、そうしないのだろう。やはりギャンブルである以上、1万発出たならその1万発分の「重み」であるとか、天井裏のパイプをガラガラと玉が流れていく「振動」、そういったフィジカルな要素は切り捨てられないものなのかもしれないね。

 ……と、ぼくはパチンコ業界の裏事情に触れることなく、穏便に話を進めていこうとしているのだが、このあと両さんはとんでもないことを言い出す。

97巻/P11/2コマ目
97巻/P11/2コマ目

 ゲーム内通貨としての換金、という意味ではない。ゲームで稼いだ玉を、本物の現金として換金することができるのではないか? という両さんならではの欲望むき出しの推理なのである。実際、取扱説明書をよく読んでみると、「景品の交換後」の項目に「これでゲームが終了したと思いますか? あなたの腕で“ある秘密”を探してみてはいかが?」などと書いてある。もし、それが本当だとしたら、このソフトが3万円もすることにも納得がいく。

 両さんは丹念に訊き込みをはじめる。「本物の現金に換金したい」とストレートに店員へ問いかけるが、当然のごとく答えはNOだ。そこで質問を変える。そうして少しずつ真相に近づいていくのだ。まるでアドベンチャーゲームである。

「じゃ、換金所を教えてくれ!」と言うと、店員は「そんなのありませんよ!」と否定。そりゃそうだ。だが、両さんは「いや、ある!!」と断言。なぜ、そう言い切れるのだろうか?

97巻/P12/3〜4コマ目
97巻/P12/3〜4コマ目

 ドット絵をズームアップして見ると、数ドットの汗をかいている。このことから秘密の存在を確信した両さんは、あの手この手を駆使して真相に迫っていく。

 玉をあえて全部ボールペンに換える。動揺して大汗をかく店員。たくさんの客の中から服装で常連客を見抜き、換金所を尋ねる。いい答えが得られない場合は、質問を変える。「もう一度用件を聞こう」と返ってきたら脈ありだ。

 ようやく換金所の場所を教えてもらった。喜び勇んでその場所へ向かうが、パトロール中の警官に職務質問される。適当にごまかし、キャバレーの呼び込みのお兄さんに聞いてみる。

「日の出の方向に虹がかかる時、道はひらける」

 またRPGみたいになってきた。仲間ができ、合言葉を聞かれ、地下迷宮に入り込む。襲いかかるコウモリを、魔法の剣で撃退する。

97巻/P15/5〜6コマ目
97巻/P15/5〜6コマ目

 もはや何のゲームをしているのかわからなくなってきた。このあとレースゲームになり、格闘ゲームになり、クイズゲームになる。すべての試練を両さんのテクニックと中川の知恵でくぐりぬけ、ついに換金所を見つけ出したのであった。

■シーン3

 換金所にいたのは、妖しい魅力を放つ美女。「これから教える秘密は誰にも言っちゃダメよ」と彼女が渡してくれたのは、1冊の本だった。それは通販カタログのようなものだ。

97巻/P20/3〜4コマ目
97巻/P20/3〜4コマ目

 つまり、出玉に応じてカタログから商品を選び、会員ナンバーと共にハガキをゲーム会社に送れば、後日、その商品が送られてくる仕組みだった。現金ではないが、それに見合った価値のものが手に入るという抜け道だ。もちろん、現実にこんなことをやったら景品表示法などに引っかかって消費者庁や公正取引委員会に怒られてしまうが、そこはまあ漫画の中の話なので大目に見ようじゃないか。

 ともかく、両さんの元にはちゃんとカメラ、ヘッドホンステレオ、腕時計といった景品類が届いた。実に良心的な会社である。

「そうと分かれば本気で稼いでやるぞ」と息巻く両さん。いままでのは本気じゃなかったの? とびっくりさせられるが、欲望に火がついた両さんはもう誰にも止められない。すごい勢いで出玉をボールペンに交換し、換金所へ向かう。

 が、相手も黙ってはいない。以前の換金所はすでに閉鎖されていた。

 このゲームを発売したメーカーは、換金所までたどり着けるユーザーなど数えるほどしかいないだろうと、タカをくくっていた。ところが、同じ人物(両さん)から何通もの請求ハガキが来たので仰天する。大慌てで換金所を閉鎖し、会社ごとトンズラしたのだ。

 しかし、それで諦める両さんではない。このあと、両さんの戦いはゲームの世界を飛び出し、ゲーム会社を探す冒険へと移行していくのだった。

第13回へ続く

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