ファミ熱!!プロジェクト

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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第10回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第95巻収録
「最強ゲーマー両津!!の巻」

 この連載の第1回では、「アンコール雪之城の巻」というエピソードの中で、両さんが「テレビゲームのプロになる」と発言していることを取り上げた。

『こち亀』はナンセンスなギャグ漫画でありながら、秋本治先生とスタッフによる綿密な取材とアイデアの飛躍が、結果的に様々な未来予測を果たしていることでも知られる。両さんの「テレビゲームのプロになる」発言も、まるで現在のeスポーツを予見していたとして、一部のゲームファンのあいだでは話題にのぼることが多い。

 そして、今回のエピソード「最強ゲーマー両津!!の巻」では、両さんがいよいよゲームの大会に出場する。

 ファミコン全盛期には、全国各地でゲーム大会的なイベントが催されたが、それはあくまでもゲームメーカーが新作ソフトの販売促進を目的として開催するものであり、ゲーマー同士が腕を競い合うような場ではなかった。

 ところが、1991年に『ストリートファイターII』(カプコン)がゲームセンターに登場すると、対戦格闘ゲームというジャンルが爆発的な人気を呼んだ。この年の夏には、アーケードゲーム専門誌『ゲーメスト』の主催で「全日本ストII チャンピオンシップ」が開催されている。おそらくこれが日本初の全国ゲーム大会だと言えるだろう。

 今回のエピソードは、そんな時代背景をベースにして描かれているのだが、果たして両さんはどんな活躍を、あるいは失敗を、見せてくれるのだろうか。

■シーン1

 舞台はいつもの派出所。そこに両さんを探す大原部長の声が響く。「ゲームセンターに行くと言っていたけど……」と麗子が答えるのだが、職務中の警察官が仕事をサボってゲームセンターに行く(それも内緒にするわけでもなく堂々と同僚に告げて)という時点で、すでにおかしい。

 さらに中川は「対戦ゲームの全国大会がメッセであると言ってました」と詳細まで報告。こりゃまた部長のカミナリが落ちるのか、と思えばさにあらず。

 部長「あいつもその大会に出るのか?」
 中川「先輩は関東代表ですからね」
 部長「いつ代表になったんだ」

 と、なんだか普通に会話が進んでいく。ここまででコミックスも95巻、描かれてきたエピソードは900話を超えている。散々両津の悪行を見てきた部長は、もはやこの程度のことでは驚かなくなったということか。

 さて、場面はそのゲーム大会の会場へ移る。先程、中川が言っていたように、いかにも幕張メッセっぽい外観の建物が描かれている。もしもここをフルに借り切って大会が行われているのだとしたら、相当な規模のイベントということになるだろう。

95巻/P87/3コマ目
95巻/P87/3コマ目

 向かい合わせに置かれたゲーム機を操作しているのは、両さんと見知らぬ若者。この若者はチャンピオンらしい。つまり両さんは王座へ挑戦中ということのようだ。二人の背後には巨大なモニターがあり、対戦中のゲーム映像が映し出されている。

 両さんの操作するキャラクターが何やら画数の多い必殺技を繰り出すと、見事、相手にヒット。ダメージは大きく、チャンピオンの操作キャラである臥旺(がおう)はダウンしてしまう。慌てたチャンピオンは、使用キャラを中国風少女の厘燐(りんりん)にチェンジする。どうやらこれはとっておきのキャラのようだ。

95巻/P88/5コマ目
95巻/P88/5コマ目

 その後、チャンピオンは奇声をあげ、長髪を振り乱して踊り始める。実況アナウンサーが冷静に説明しているところを見ると、チャンピオンのいつもの儀式なのだろう。

 これに対して、両さんはいたって冷静だ。アナウンサーに抱負を聞かれると、「私の勝ちだね」と言い切ってしまう。さらに「たかが5時間の大会で柔軟体操してる様じゃプロとは言えん。すでにあいつの負けだ!」と追い打ちをかける。

 その言葉にキレたチャンピオンは殴りかかってくるが、ゲームだけでなく現実のケンカも強い両さんのことだから、あっさりと身をかわす。それでもしつこく勝負を挑んでくるチャンピオンに、両さんも仕方なく応戦。蹴り一発でやっつけてしまう。

 相手は、両さんをただの大人だと思って見くびっていた。囲碁や将棋のようなオヤジ向けゲームしか知らないのだろうとナメてかかっていた。そんな相手に対して、両さんが相手に言い放つセリフが、かっこいい。

95巻/P92/1〜2コマ目
95巻/P92/1〜2コマ目

 たとえ相手が年下でも、負けるのが嫌いな両さんは「本気でやるぞ!」と言い放つ。そうしてチャンピオンとの決戦でも、相手の操作から生まれた一瞬の隙をついて必殺技を叩き込み、見事、勝利をもぎ取るのだった。

■シーン2

 場面はふたたび派出所の中。あれからしばらく経ち、新チャンピオン(両さん)誕生の記事が掲載されたゲーム雑誌を、中川や大原部長たちが読んでいる。

 中川によると、両さんはゲーム大会の他にも、ラジコンの全国大会でも3年連続優勝しているほどだという。ラジコンの高級モデルや最新のゲームソフトに給料のほとんどをつぎ込み、常に腕を磨いているというわけだ。

 ここで中川から驚きの情報がもたらされる。先日の対戦格闘ゲームの世界大会が開かれ、両さんはそこでも優勝してしまったというのだ。

95巻/P96/1〜2コマ目
95巻/P96/1〜2コマ目

 その事実はアメリカのゲーム雑誌にも紹介され、両さんは「東洋の魔術」と称賛されるほどの存在になっているという。そんなすごいゲーマーを、世界が放っておくはずがない。両さんは、アメリカ製の超スーパーコンピュータ「ジーザス」と対決することになる。コンピュータ対人類の決戦。まさか、その人類代表に両さんが選ばれてしまうとは……。

■シーン3

 次なる舞台は、ジーザスを開発したIBN社のフロア。ここで、世紀の対戦「超スーパーコンピュータ vs チャンピオン」のゲームバトルが行われる。

95巻/P97/3コマ目
95巻/P97/3コマ目

 上のコマに描かれている、ちょっとした一軒家ほどのサイズの四角い箱がジーザス本体だ。その本体から、対決のためのステージに向かってマジックハンドが伸びている。これ、冷静に考えるとおかしな光景だ。ジーザスはコンピュータなんだから、ゲーム機に直結すれば済むはずなのに、わざわざマジックハンドを制御してコントローラのボタンを操作させる。この本末転倒なやり方が、いかにも『こち亀』ワールドといったところだろうか。

 ジーザスは、デモンストレーションとして「インベーダーゲーム」をプレイしてみせる。宇宙空間に居並ぶインベーダーを、完璧なボタン連打で撃破するジーザス。こういう機械的な操作は、コンピュータ制御されたマジックハンドならお手の物だろう。おまけに、名古屋撃ちまでインプットされているところが憎い。

 そして、いよいよ両さんとジーザスの対決が始まる。

95巻/P99/1コマ目
95巻/P99/1コマ目

 いきなりジーザスの圧勝である。いくらゲームが得意な両さんといえども、コンピュータによる正確で機敏な動きには敵うはずもない。開始1.6秒でダウンを取られてしまった。

 これに対して両さんは、いまのはインチキではないかと抗議の声をあげる。あまりにも技の動きが速く残像しか見えないほどだったからだ。

95巻/P100/3〜4コマ目
95巻/P100/3〜4コマ目

 両さんが疑いの目で見るのは当然だ。先にも書いたように、コンピュータから直接信号を送った方が合理的で、操作ミスも起こらないのだから。しかし、それでは人間に勝ち目がなさすぎて、ゲームが成立しなくなってしまう。あえてマジックハンドでボタン操作をさせるという“余計なひと手間”をかけているからこそ、コンピュータと人間の対決が成立するのだ。

 ということは、どこかに勝機もあるはず。かつて、映画『プレデター』の中でシュワルツェネッガーは言った。無敵かに思えたプレデターが黄色い血を流しているのを見て「血が流れるなら殺せるはずだ」と。

 ジーザスにも、倒す方法はきっとあるだろう。両さんが『プレデター』を見たかどうかはわからないが、両さんはこのあと、我々の予想もつかない方法でジーザスに立ち向かっていく。その結末は、もちろんコミックを入手してご覧いただきたい。

第11回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

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