ファミ熱!!プロジェクト

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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第9回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第92巻収録
「部長もはまった!!の巻」

 今回取り上げるエピソードは、中古ゲームソフトの売り買いを題材にしたもの。ゲームソフトの中古品ビジネスというのは、以前から業界に携わる者たちの頭を悩ませる問題だ。

 ゲームを開発・発売する側(メーカーやソフトハウス)からすると、中古ゲームの流通は著作物の頒布権を侵す問題として、できることなら禁止にしたいというのが本音。一方、ゲームを販売する小売店(とくに中古品を扱う店)側にとって、中古ゲームも古物の一種であり、そのリサイクルは法的に問題がないと考える。それに、中古市場は将来的なユーザー層の開拓にもつながるのだから、むしろ歓迎されるべき、という考え方もある。これらの対立は常に並行線で交わらない。

 ちなみに、ぼくはゲームを開発する仕事もしているが、副業で古物商を営んでもいる。ゲーム開発者の一人として、著作物の権利が守られるのは当然だと思っているが、だからといって中古市場を否定することには疑問を感じる。著作物が保護されることと、中古市場の正当性は、両立できるはずだと考えているのだが、それは甘すぎるのだろうか?

 と、このようにゲームソフトの中古品ビジネスは悩ましいものなのだが、『こち亀』でそんなややこしい話をしているわけではない。さて、中古ゲーム屋を舞台に両さんはどんな暴れっぷりを見せてくれるのか。

■シーン1

 派出所内に響き渡る大原部長の叱責の声。どうやら、両さんが職場に持ち込んだ大量のファミコンカセットを部長が見つけて、取り上げてしまったようだ。なんとか奪い返そうと追いすがる両さんは、まるで子供のよう。

92巻/P92/4コマ目
92巻/P92/4コマ目

「大人のくせにいつまでもファミコンをやるんじゃない!」と叱る部長に対して、両さんは「大人がやっておもしろいから困ってしまうんです」と反論。これは、一見すると幼稚な言い訳に聞こえるけれど、ある意味ではファミコン──テレビゲームというものの本質を言い表している。

 ファミコンは、最初に登場したときは子供向けのオモチャだったかもしれない。でも、それだけだったら、あの社会現象と言えるほどのブームにはならなかっただろう。大人も夢中になってクリアを目指す。エンディングを見るために徹夜をする。名作小説や大作映画にも匹敵する物語の感動がある。だから、ゲームはいまもなお発展を続けている。

 とはいえ、そんな理屈が通じるはずもなく、部長はファミコンの詰まった箱を捨てに出かけてしまう。悲しみにくれる両さん。

 と、そのとき、中川が部長を呼び止める。捨ててしまったのではゴミになるから、「ファミコンショップに引き取ってもらったらどうです?」と、アドバイスをするのだ。部長は、こんなものが売れるのかと半信半疑ながら、近くにあるというファミコンショップへ向かう。その会話を聞いていなかった両さんは、すっかり部長はファミコンを捨てに行ったと思い込む。

■シーン2

 部長がやってきたのは「ファミコンショップ ラッキー」という店。勇気を出して入店してると、客の子供たちが店員さんとゲームのタイトルを次々に挙げて会話している。部長には何を言ってるのか、さっぱりわからない。

 カタブツの部長がおずおずと用件を伝えると、さっそく店員さんは持ち込まれた商品の査定に入る。待たされているあいだに、部長は物珍しさで店内を観察して歩く。陳列されているソフトの種類の多さに感心していると、ひとつのソフトに目が止まった。

92巻/P95/5〜6コマ目
92巻/P95/5〜6コマ目

 スーパーファミコン用ソフトの『将棋 山田名人』だ。そんなものは実在しないが、ともかく部長はこれによって“テレビゲームで将棋ができる”という事実を知ってしまう。将棋が趣味の部長は、この瞬間からテレビゲームというものに興味のメーターがググッと接近していくのだ。

 だが、店員さんからはゲーム機を持っていないとダメだと言われる。『山田名人』はスーパーファミコン用だが、他のゲーム機用にもいろいろな将棋ソフトが発売されている。「おたくのゲーム機は何!?」と店員さん。しかし、部長がゲーム機など持っているはずがない。

 ここで、部長は何気なく警察手帳を取り出した。「最新機器と言えば、警察手帳くらいしか持っておらん!」と言う。なんと、『こち亀』の中の警察は電子手帳を導入していたのだ。店員さんが確認すると、この警察手帳ならICカードを使うことができると言う。

92巻/P97/1〜2コマ目
92巻/P97/1〜2コマ目

 そして、運のいいことに(いや悪いことにか)『山田名人』は電子手帳用にも移植されていた! 店員さんから操作方法を教わり、ほんの少しのつもりで遊んでみると……案の定、ズッポシはまってしまう部長であった。

 16戦目でようやく1勝した部長。すっかりゲームの虜になっている。このソフト、価格は12,800円。なかなかいいお値段である。店員さんから「それ、買う?」と聞かれ、あわてて否定する部長だが、先ほど持ち込んだ両さんのファミコンの買い取り金額が12,000円だという。800円ほど足りない。すると、店員さんはその差額をチャラにしてくれると、悪魔の取り引きを持ちかけてくる。

「わしは別に買いに来たのでないから」とあくまでも固辞する部長だが……。

92巻/P98/6コマ目
92巻/P98/6コマ目

■シーン3

 さて、派出所に戻ってきた部長。もうこうなると仕事に手がつかなくなる。これではいけないと手帳を机にしまうが、仕事をしていても、つい将棋の指し手を思いついてしまい、たびたび手帳を取り出す有様。なんだかゲームにはまった両さんの気持ちが少しだけわかった部長なのだった。

 一方その頃、両さんが行きつけのゲームショップ「フレンド」でサボっていると、妙な噂を耳にした。この近くの店で、制服姿の警察官がゲームを売りにきたというのだ。

92巻/P103/6コマ目
92巻/P103/6コマ目

 店員が何気なく、その警官の買っていったソフトが電子手帳用の『山田名人』だと言った瞬間、両さんの目がキラリと光った。将棋好きの警官といえば……。

 このあと、立場の逆転した両さんがどのような態度に出るかは、実際にコミックスを読んで確かめてほしいが、ラストに両さんが作ったオリジナルの将棋ソフトが登場する。これが傑作なので紹介しておこう。

 ゲームメーカーに勤務する友人と短時間で無理矢理作ったというそれは、何もしていないのに駒が勝手に動いて、相手が有利になったりするというズルイもの。それはいつも両さんが使っている手なので、部長にはバレバレだ。

92巻/P108/5〜7コマ目
92巻/P108/5〜7コマ目

 必死にすっとぼける両さんだが、部長が王手を決めて勝ったと思うと、こんどはゲーム内で地震が発生。盤面がガラガラと崩れてすべては振り出しに戻る。ある意味、普通の将棋のプログラムを組むより難しいことをしている両さんなのだった。

第10回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

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