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こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

第4回

※文:とみさわ昭仁

コミックス第74巻収録
「クレーンゲーム チャンピオン大会!の巻」

 前回に続いて、またまたクレーンゲームのエピソードである。前回の「突撃!クレーンゲームの巻」が少年ジャンプ本誌に掲載されたのは1991年の第8号。そして、この「クレーンゲーム チャンピオン大会!の巻」は19号に掲載された。つまり、11週間をあけて描かれた続編ということになる。

 両さん、中川、部長、麗子、本田といったレギュラーメンバーだけでなく、忘れた頃にひょっこり登場する準レギュラーが多いのも『こち亀』の魅力のひとつだが、エピソード単位でもこのように程よいタイミングで続きを見せてくれるのがうれしい。そして当然のことながら、続編では前回以上に話の展開はエスカレートしていく。

■シーン1

 まずは派出所。外にはテレビ局のハイヤーが停まっている。なんと、例のクレーンゲーム特番のディレクターが直々に、両さんへ出演依頼をもって来たのだ。両さんの活躍の影響もあってか、あの番組は大人気となってシリーズ化された。そこで、歴代の優勝者たちを集めてチャンピオン大会を開こう、というわけだ。もちろん、こんなうまい話を逃す両さんではない。前回同様、クレーン操縦役の中川と共に出演を快諾する。

 会場は前回と同じテレビ局のスタジオ。収録用セットの背景には「人間クレーンチャンピオン大会」と書かれた派手な看板が掲げられている。出場するのは歴代の優勝者が10組。両さんと中川は職業を明かすわけにいかないので、前回同様「フリーター」ということになっている。

 今回のセットは、いきなり出場者を追い込むようなものだった。その名も「水中クレーン」である。

74巻/P168/5コマ目
74巻/P168/5コマ目

 前回のエッセイで、かつて水槽の中に活きた伊勢エビが入っているクレーンゲーム機が実在したことを紹介したが、まるでそれを現実に、いや、それ以上に発展させている。つかむのは伊勢エビではなく、ビニール袋に包まれた高級家電やオーディオなど。水は少し不透明にしてあって、賞品を見定めしにくいようにしてあるというのが、なかなか凝っている。

 時間は無制限。とはいえ、水中で息が続く限りなので、普通の人間なら潜っていられるのは、せいぜい1分か2分が限度だろう。いちおう、もしものために出場者は酸素ボンベを背負っているが、使ったらその時点で失格だ。

 トップバッターの挑戦者は、うまい具合に賞品群のそばに潜ることができた。高級家電を両手両足に抱えるが……水中では軽く感じたものが水面に出ると非常に重く感じられ、ポロポロと落としてしまう。

 まあ、普通はそうなるよね。これは、このあと“普通じゃない人”代表、両さんの活躍を引き立てるためのいつもの展開だ。

74巻/P170/1〜2コマ目
74巻/P170/1〜2コマ目

 お次は両さんの番。初代チャンピオンの両さんは「ボンベなどいらん! かえって邪魔になる!」と、素潜りでチャレンジ。しかも、この水中コースでもっともハイリスク・ハイリターンなコースへ向かう。そこに待ち受けているのは……。

■シーン2

 いちばん奥にあるプールは、超高額賞品ばかりが沈む宝の海。しかし、そのぶん危険度も高い。着水してから30秒が経過すると、南米アマゾン川に生息する肉食魚ピラニアが放たれるのだ。もはやテレビゲームどころかゲームセンターともかけ離れた話になっているが、このブレーキの利かない逸脱こそが『こち亀』の真骨頂でもあるので、このまま話を進めさせてもらおう。

74巻/P171/5コマ目
74巻/P171/5コマ目

 ご覧の通り、ピラニアごときで動じる両さんではない。鋭い歯でスネをかじられても、蚊が刺した程度にしか感じられないようだ。

 ピラニア軍団をものともせず、賞品を選別することじつに5分。江頭グランブルーも驚きの新記録で、両津チームは見事に第1コースをクリアし、トップの成績で通過する。感嘆するみんなの前で、両さんはおもむろにウエットスーツの胸元から何匹ものピラニアを取り出して、ひと言。

「熱帯魚屋に高く売れるぞ!」

 どこまでも抜け目のない両さんなのだった。

■シーン3

 第2コースは新宿西口のビル街に舞台を移して行われる。高層ビルのてっぺんにロープを張り、そこから吊り下げられた10名の出場者が、路上に置かれたたったひとつのダイヤモンド(2,000万円相当)を取り合うという、過酷極まりないものだ。

 ここでのクレーンは、手動でハンドルを操作しなければならないというルール。したがって、他の出場者は体力のありそうな人物にハンドル操作をさせている。両さんチームの中川は非力なので、とてもハンドルを操作しきれないだろう。かといって、自分がハンドルを担当して中川に賞品をつかませる、という発想は両さんにはない。

74巻/P174/2〜4コマ目
74巻/P174/2〜4コマ目

 そこで、両さんはとんでもない作戦に出る。ロープからぶら下がった自分の身体を振り子のようにして、他の出場者たちのロープを絡ませる。全員が身動き取れなくなったところを見計らい、ロープを固定しているバックルを外すと……そのまま飛び降りる!

 あわや地表に激突! と言いたいところだが、不死身の両さんは運良く植え込みに突っ込んで傷だらけになりながらも着地に成功。そのままダイヤをつかんで逃走してもよさそうなものだが、あえてそれはせず、ロープを逆によじ登ってスタート地点へ戻る。変なところで律儀なのも両さんらしい。

 なんとかゴールインして「わしの勝ちだぞ!」と宣言する両さんに、司会者も認めざるを得ないのだった。

■シーン4

 そして、いよいよ最終コースまでやってきた。こんどはサファリランドを利用してのお宝争奪戦だ。平原のあちこちに賞品が置かれており、ヘリコプターから吊り下げられた出場者がそれをつかむ。ビデオデッキやカメラなどの比較的手頃な賞品は、草食動物エリアに置かれている。しかし、500万円以上の高額賞品はもっとも危険なエリア、つまり猛獣たちの生息地域に置かれているのだ。

 さらに、危険エリアには10個の大金庫が配置されている。このうちのどれかひとつにだけ、現金1億円が入っているという。当然、両さんの狙いはこれである。「一億あれば1年間は遊んで暮らせるぞ」と言う両さん。さらりと聞き流しそうになるが、1億円をたったの1年間で使い切ろうというのは、あまりに贅沢が過ぎるだろう。でも、日銭は持たない主義の両さんなのだから仕方がない。

 両さんを乗せたヘリは、なんの迷いもなく危険地帯に向かう。下界で待ち受けるのは、腹をすかせたライオンやトラだ。

74巻/P180/3コマ目
74巻/P180/3コマ目

 ところで、サファリを題材にしたゲームといえば、タイトーの『サファリ』('77)、新日本企画(後のSNK)の『サファリラリー』('79)、セガの『トランキライザーガン』('80)といったあたりが思い出される。とくに『トランキライザーガン』は、迷路状になったサファリに出没する猛獣たちを麻酔銃で眠らせてトレーラーに運ぶゲームで、人間の通り抜けできないブッシュ(茂み)を猛獣たちはすり抜けてくるのがスリリングで、当時、ずいぶん100円玉を注ぎ込んだものだ。

 さて、この難関に両さんはどう挑んだか。

 思い切り正面突破をかましてくれた。高額賞品には目もくれず、とにかく目指すは金庫のみ。猛獣たちの隙をぬって、1つめの金庫を背中へ。さらに両腕にも2つの金庫を抱え、足でも1つをカニ挟みする。合計4つの金庫をいちどに持ち帰ろうという寸法だ。

 ところが、両さんプラス金庫4つは相当に重い。ロープ1本で支えきれるはずもなく、途中でロープの切れた両さんは金庫もろとも猛獣の輪の中へ。

74巻/P181/5コマ目
74巻/P181/5コマ目

 さすがの両さんでも重い金庫を4つも抱えては走れない。そこで、2つはあきらめ、残りの2つだけを抱えて逃げる。トラが見守るなか、大急ぎで金庫を開けてみると(どうやって開けたのかは謎。1億円への執念は岩をも通すのだ)、中から出てきたのは「ふりかけ」と「チョコレート」。ああ、1億円との落差はあまりにも大きい……。

 開けても開けてもハズレが出てくる事態に、堪忍袋の緒がブチ切れた両さんは猛獣たちに八つ当たり。このままでは命が危ない! そして護衛役のハンターが持つ麻酔銃は、猛獣よりも猛獣と化した両さんの方へ向けられるのだった。

第5回へ続く

こちゲー 〜こち亀とゲーム〜

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