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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の三十七:脅される御用聞き

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  前回(其の三十六:口説かれる御用聞き)に引き続き、御用聞き少年にまつわる句をご紹介します。前回は、安い料金・手軽な食べ物で尻を差し出す御用聞きたちの句でした。それも悲劇ですが、今回は更に過酷な状況に追い込まれた少年たちの様子です。

廻りをとるぞよと御用おとされる

  「廻りをとる」とは「輪姦する」という意味です。つまり、今この場で自分に尻を掘らせなければ、仲間たちも呼んで大勢で犯してやるぞという脅しに他なりません。目の前にいる一人の好色なおやじに尻を貸すか、さもなくば輪姦されるか…むごい選択です。年端もゆかない御用聞き少年にとっては、それでもマシな「一人のおやじ」にやられることを選ばざるを得なかったことでしょう。極悪非道なおやじも居たものです。

大部屋の隅へ御用をおったおし

  江戸時代には「参勤交代」という制度があり、地方の大名が江戸で暮らすための屋敷がありました。これが「大名屋敷」です。その参勤交代に付き添ってきた家臣たちには屋敷の塀代わりに作られた長屋が住まいとしてあてがわれました。家臣といっても、身分差がありますので、その住む部屋にはランクがあります。「大部屋」は、身分の低い武士たちが共同生活を強いられた部屋です。
  参勤交代で江戸にやってくる時は、大抵が単身赴任だったため、性欲を持て余していたのでしょう。自分よりも身分の高い武士たちが、色町に遊ぶことを妬んでいたかもしれません。そこで、目をつけたのが、明らかに自分よりも弱い立場の御用聞き少年です。問答無用に押し倒して、性欲の捌け口にしたという句です。弱い立場の者が、さらに弱い立場の者を虐げる。悲しい悪循環ですね。

けつ路地と名付け御用寄り付かず

  脅され、襲われ、我が身を餌食にされた御用聞き少年たちが、身を守る手立てとして出来ることといえば、そうした好色なおやじたちが居る場所に近づかないことくらいしかありませんでした。
  現代でも、性被害にあった時、被害者でありながら口を閉ざす人が大勢います。「本当はおまえが誘ったんだろう」「おまえに隙があったからだ」などという非難を浴び、二次被害を受けることがあるからです。御用聞き少年たちも、お店の主人たちに訴えることは出来なかったものと推測されます。性加害者のおやじたちもお店にとっては大切な「お客」だからです。
  「けつ路地」と名付けることで、ほんのささやかな抵抗を示した御用聞き少年たちに、負けるなよ、と励ましの言葉をかけてあげたくなります。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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