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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の二十二:納所の事

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  会社に経理があるように、お寺にも会計を司る部署があります。それが「納所(なっしょ)」です。お寺に入る金銭などを扱う部署ですが、その地位は低く「納所小僧」などとも呼ばれていました。これは金銭勘定だけでなく、雑用一般をこなしていたからということもあるんですけどね。
  そんな彼らの句を見ていきましょう。

芳町なればよけれどと納所言ひ

  お寺の金銭を扱うのですから、和尚が遊びに行く軍資金は当然納所を通さなければなりません。遊女街・吉原へ行って豪遊・散財するくらいなら、まだ芳町の方がよい、と言っている句です。とはいえ、芳町での遊びもお安いものではなかったのですが、和尚の遊びを止める権限は彼らにはありません。しぶしぶお金を取り出す感じが出ていますね。

芳町にござる(たち)かと納所言い

  「芳町に行く性癖か」と納所が言うところを見ると、こちらの和尚さんは、吉原でも遊んでいるようですね。女色の禁をすでに破っているのに、更に男までも…となると、納所も文句のひとつも言いたくなったことでしょう。また、女に男にとうつつを抜かしている和尚への鬱憤もあったかもしれません。

神田行きする御納所はせちがらし

  芳町通いする和尚をしぶく思っている納所ですが、やはり彼らも健康な男子である以上、性欲は溜まります。溜まった性欲は解消されなければなりません。そこで彼らが行くのは神田・花房町の男娼街でした。神田は芳町に比べると、格が落ちると言われ、その分リーズナブルに遊べる街です。納所は自由になるお金があまりなかったという理由もさながら、お寺の内証も知っているだけに、高級なところには行きかねたのでしょう。それを「せちがらい」と言ってしまうのは可哀そうな気がします。   時には和尚さんが納所小僧にぱーっと奢ってくれる…なんてことはなかったのでしょうか。もっとも、派手に遣っても所詮お寺のお金なんですけどね。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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