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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の弐:江戸のローション事情

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  男同士の交接(セックス)に必要なのは潤滑剤ですね。今でこそ、手軽にラブローションを入手することが出来ますが、江戸時代の人々はどうしていたのでしょう?

  てっとり早く使われていたのは「唾液」です。自前で調達出来る潤滑剤ですが、滑らかさという機能においては少々欠けるものがあります。

それに、出そうと思って大量に出せるものでもありません。ある古文書では「唾液が足りなくて大変な時は、梅干しを思い浮かべ、切った梅を用意しておきなさい」と指南していますが、どれほど効果があったやら。

  そこで登場するのが「通和散(つうわさん)」という潤滑薬です。これはトロロアオイという葵科の植物の根を干して粉末にしたもの。「とろろ」という名前から分かるように、トロロアオイの根からは粘液成分が抽出されます。

  いざ!という時には、この「通和散」を口に含むと、唾液で溶けてトロトロのローションが出来上がるというわけなんですね。これは便利。

天神の裏門で売る通和散

  「天神」とは、湯島天神のことです。湯島あたりは陰間茶屋(男娼を売る店)が盛んで、需要も大いにあったものと思われます。男同士の交接に用いる薬のため、「裏門」は「肛門」にひっかけています。

  この句で詠まれているのは、その場所から推測して「伊勢七」というお店だったとされていますが、江戸時代の「大人のオモチャ屋」で忘れていけないのが、東日本橋の「四ツ目屋」です。

門口の行燈暗き渡世なり

  四ツ目屋の店構えを詠んだ句です。「入り口の灯りが暗い稼業である」という意味ですね。売っているものが売っているものだけに、明るいと客も入りづらい。だからこその気遣い。さすが商売人! 四ツ目屋は淫具・媚薬を多く取り扱っており、当然「通和散」も売っていました。

四ツ目屋は得意の顔は知らぬ也

  これまた粋な接客の心遣いですね。普通のお店ではお得意さんの顔を覚えてナンボですが、四ツ目屋では大得意の客が来ても知らない顔をする。これなら、武士もお坊さんも安心して通和散を買えたに違いありません。

  ところで「自家製ローション」を作る人もいました。材料は卵白とふのり(海藻の一種)、葛粉。これらを混ぜ、紙に延ばして干して作ったようです。ニンゲンって、いろいろ知恵を出すものですね。では、また。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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